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好きだからと言って、興味を持ったことが最初から上手く出来るかというと、決してそんな事はない。
元から才能があったり、物事の飲み込みが早いタイプは直ぐに上達するのだろうが、そうでない者はそれこそ血の滲む努力をして技術を磨いていくものなのだ。

例えば裁縫。
ミシンで自分の指を縫ったこと数回。
縫いかけたこと数えきれず。
針で指を刺すのは殆ど日常茶飯事となっていた。
しかし、そうして完成した作品の価値はプライスレスである。

早い話が、なまえは壊滅的に不器用だが、やる気と根性だけはある少女なのだった。


「笹川部長ーー!!」

「おお、なまえか!」

部室の前にいた了平が呼びかけに応じて振り返る。
飼い主を見つけた犬が尻尾を振りながら駆けていくように、ぶんぶんと手を振りながらなまえは彼に向かって走っていった。

了平の近くには、見たことはあるが話したことはない男子が三人立っている。
確か彼らは了平の妹の京子のクラスメイトだ。

一方で、綱吉達もこちらに向かって走ってくる少女の姿を見ていた。

「お兄さん、知り合いですか?」

「うむ。うちの部のマネージャーだ」

「へえ、マネージャーがいたんスか。ボクシング部には何度も来てるけど初めて見たなぁ」

「暫く入院していたからな。これで今年になって三回目か。しかし極限に根性のある奴だぞ!」

「さ、三回も!?もしかして病弱とか…?」

「いや、丈夫で健康そのものだ!」

「だったらどうして──」

何度も入院しているのか、と綱吉が言いかけた時だった。
走ってきていた少女が何もない場所でつまずいたのは。

「あ、危ない!」

思わず叫んだ綱吉の前で、顔面から思いきり地面に倒れこみそうになった彼女は突然さっと身体を丸めて回転した。
そのままゴロゴロ地面を転がってくる。

「危ない、危ない。受け身を練習しておいて良かった…」

「嘘!?今の受け身!?」

「はい、よく転んでしまうので、柔道の受け身を習ってみたんです」

「あ…じゃあ、もしかして、入院したっていうのは転んだせいで?」

「いえ、それは受け身の練習中に失敗して骨折したせいです」

「ああ、なるほ──えええっ!?」

綱吉はドン引きした。
怪我をしないための練習で怪我して入院とか、どうなんだろう…。
わざわざ身につけた甲斐があるかどうかも微妙だ。
スカートについた土ぼこりを手でぱたぱた払いながら、少女は綱吉達に微笑みかけた。

「笹川部長の妹さんのお友達ですよね。初めまして」

「あ…、は、初めまして」

「どもっス」

綱吉に続いて山本も軽く頭を下げる。
獄寺は先ほど目の当たりにした件のせいか、なんだこの女と言いたげな顔で眉間に皺を寄せて彼女を見ていた。



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