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※未来編後、もし桔梗がヴァリアーにスカウトされていたら…



桔梗さんの部屋を訪れた私は、持参した袋から買ったばかりの品を取り出して彼に見せた。

「桔梗さん、マジョマジョの新作です!」

《マジョマジョ》とは、魔女ルカと魔女リカという双子の魔女をイメージキャラクターに持つ化粧品メーカーのことだ。
ケースのデザインなども綺麗で、安価というほど極端な低価格ではないものの比較的購入しやすい値段のため、若い女性を中心に爆発的に売れている。
特にゴシック系のメイクやファッションを好む層に非常に人気があるらしい。

今日買ったのは新商品のアイシャドウだ。

「ハハン、シャイニーゴールドですか」

「ね、綺麗な色ですよね」

それから数分くらい、私と桔梗さんはアイシャドウの発色についてや、もちの良いシリーズはどれかなどを語り合った。
時間を忘れてしまうくらい楽しい時間だった。

でも、それがいけなかったのだ。


話が途切れたところで、「貴女ならいつでも大歓迎ですが、」と桔梗さんは困ったように微笑んで言った。
小首を傾げた拍子に、彼の豊かな髪が肩口から滑り落ちる。
それを見て、キレイだなあ、などと暢気な感想を抱いた私は、桔梗さんの次の言葉を耳にした瞬間、ガツンと頭を殴られたような衝撃を受けることになった。

「貴女のような若い女性が夜に男の部屋を訪問しては、下衆な勘繰りをする者もいるでしょう。私も一応男ですので」

「す、すみませんっ!!」

私は慌てて謝った。

(うわああああ!!恥ずかしい!!!!)

顔が熱い。たぶん真っ赤になっている。
今のは迷惑だから止めて下さいっていう、やんわりした拒絶だよね?
調子に乗りすぎて迷惑かけちゃったんだ、私…。
どうしよう、泣きそうだ。

「あのっ、ほんとごめんなさい!」

殆ど直角に勢いよく頭を下げてもう一度謝る。

「なまえ、」

「迷惑かけてしまってすみませんでした!!」

桔梗さんが何かを言いかけたのを遮るようにしてまたもや謝り、そうして私はそのまま部屋から飛び出した。
──いや、逃げ出した。



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