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──スクアーロ


……なまえが呼んでいる声が聞こえる。


「スクアーロ!」


唐突にクリアになった意識とともに、苦痛も急激に戻ってきて、スクアーロは思わず低く呻いた。
どうやら少しの間気を失っていたらしい。

(………そうか、屋敷が崩れて……)

任務で訪れた屋敷の最深部でターゲットを追い詰めた。
スクアーロにとって予想外だったのは、相手が想像以上に馬鹿だったということだ。

もう逃げられないと悟ったターゲットは、仕掛けておいた爆弾のスイッチを押した。
それはとてつもない大規模な爆発となり、ターゲットは結果として自爆する形で死亡、スクアーロと彼の部下は破壊された屋敷の地下深くに生き埋めになってしまったのである。

「スクアーロ、しっかりして!」

返事をしようとして咳き込んだ拍子に、血の塊を吐き出した。何かが擦れるような嫌な感触とともに走った激痛から、肋骨が何本かイッたなと冷静に分析する。

「大丈夫?」

「あぁ」

むしろプライドのほうが重傷だった。

「お前はどうなんだぁ」

「もうどこが痛いかもわかんない」

えへへ、とこんな状況には似つかわしくない明るい調子で返された言葉に、スクアーロは少し安堵した。
この様子なら大事ないだろう。


「もうすぐボスが助けに来てくれるから頑張って」

「かっ消しに来るの間違いじゃねえのかぁ」

「うん、それは否定出来ない」

「今より酷い目に遭わされるのは間違いねえな」

「きっとルッスーリアが助けてくれるよ」

「だといいがなぁ」

なまえはいつもより饒舌だ。
特にお喋りな女というわけでもなく、寡黙な女でもないから、こういう状況で少し不安定になっているのかもしれない。

(…いや、違うか)

スクアーロは冷静に考えを訂正した。
なまえの声からはパニックや不安といったマイナスの感情はまるで感じられない。
むしろ、穏やかで落ち着いている。
助かることを確信しているからだろうか。

「もう少しだから、頑張ってね」

「あぁ」

スクアーロは暗闇の中で微笑んだ。

それから数時間後、スクアーロはルッスーリアが率いる捜索隊によって救出された。



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