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その日、綱吉は母から今夜は外食だと聞かされていた。
なんでも商店街のくじ引きで並盛ホテルのディナーブュッフェのファミリーチケットが当たったのだという。
沢田家にいる居候を含めて全員で行くとなると多少足が出る事になるが、それは綱吉の双子の姉の真奈が同行を辞退した事であっさりと解決した。

「今日は恭弥さんとお出かけに行くから、晩御飯はうちで一緒に食べようと思って」

綱吉にとって恐ろしいことに、姉は雲雀恭弥と恋人同士なのだった。
最近ではデート帰りに真奈を送ってきた雲雀が沢田家に顔を出して行く事も多い。
まあ、でも、しかし、顔を合わせなければ綱吉にとって特に害があるわけではなかったし、何より姉が幸せそうにしているのは綱吉としても悪い気分ではなかった。

綱吉は母や弟分達と高級レストランでブュッフェ。
真奈は好きな人と二人で仲良く食事。
みんな幸せで良かった良かった。
そう思っていたのだ。

「ツナ、お前は留守番だぞ。宿題を忘れやがった罰だ」

家庭教師にそう告げられるまでは。
それは事実上の死刑宣告だった。


***


「お待たせー、今日はオムライスだよ」

何の拷問か知らないが、ダイニングで雲雀と向かいあって座り、料理が出来上がるまで待つという地獄の時間を過ごしていた綱吉は、皿を持って告げられた姉の言葉を聞くなり、ほっと安堵の息をついた。
さっさと食べて部屋に戻ろう。

オムライスはごくプレーンなものだったが、小さい子供がいる家庭らしく、デミグラスソースではなくケチャップがかかっていた。
しかもいつも通り真奈はケチャップでお絵描きをしていた。
イーピンやランボ達はコレが大好きなのだ。

育ち盛り食べ盛りの綱吉は特大のオムライスで、その上には同じく大きなハートマークがケチャップで描かれている。
雲雀のものは綱吉よりやや小さめだが、やはり大きなオムライスに、これまたケチャップのハートマーク。

雲雀は別段驚いた様子は見せなかったが、ふと表情を険しくしたかと思うと、自分のオムライスと綱吉のオムライスを見比べて、

「…僕のほうがハートが小さいんだけど」

と綱吉を睨んだ。

「えっ!?なんで俺を睨むんですかヒバリさん!俺のせいー!?」

「気に入らないね…どういうつもりだい?」

「ひいっ──!!」

今にもトンファーで殴りかかってきそうな殺気を放つ雲雀を前に、冷や汗を流して震えあがる綱吉。
いくら手当たり次第に群れを咬み殺して歩く悪名名高い風紀委員長とは言え、まさかオムライスのケチャップの量ごときで撲殺されそうになる日がくるとは思わなかった。



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