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主君に仕えて、諜報活動などを任務とし、隠密行動を主体とする役職。
日本では自分達のような存在は『お庭番』と呼ばれるのだと男は少年に語った。

ボンゴレファミリーという御家の、ドン・ボンゴレという将軍に仕える、門外顧問という名の御庭番。

男の名は家光。
少年はの名はバジルといった。



「娘だ」

自慢げな笑顔で差し出された写真をバジルは恭しく受け取った。
親方様と呼び慕うこの上司に男女の双子がいることは知っていた。
双子の片割れの男の子のほうは、ボンゴレを継ぐ10代目のドン・ボンゴレとなるはずの人物だ。
今は遠く離れた異国の地で暮らしている、家光の家族である。

「名前は真奈って言うんだ。かーわいいだろ〜?」

「はい。本当に」

自分で振った話題で里心がついたのか、「奈々〜」と愛妻の名を連呼し始めた家光の隣で、バジルはじっと写真の中の少女に見入った。

可愛らしい少女だ。
といっても、絶世の美少女と呼べるほどの優れた美貌の持ち主ではない。
ただ、何故か目が離せなくなるような──不思議と惹かれてやまない、そんな雰囲気のある少女だった。
こうして見ているだけで胸の奥がほわほわと温まっていく。

沢田綱吉の双子の姉ということは、この少女の中にも初代ボンゴレの尊い血が流れていることになる。
この求心力もボンゴレの血のなせるわざなのかもしれない。

「なんだ?惚れちまったか?」

「ち、違います!そんなことはっ……」

「ハハハッ!まあ、無理もないか。なんたって、俺と奈々に似て可愛いからなぁ!」

ご機嫌な様子の上司は少年のまだ薄い肩をバシバシと叩いて豪快に笑った。
バジルがその華奢な容貌にそぐわぬ胆力の持ち主でなければ、きっと痛みに呻いていただろう。

「変な虫がつかないか今から心配でなー。そっち方面じゃツナは頼りにならんだろうし」

「虫、ですか?」

「そうだ。悪い男に捕まらなきゃいいんだが……ま、可愛い娘を持つ父親にはつきものの悩みだな」

今宵の家光は常になく気分が高揚しているようだ。
まだまだ続く家族の話に、バジルは飽きず耳を傾けていた。
こうして折りに触れて度々聞かされるせいか、まるで昔からよく知っている人物のように親近感が湧いてくる。

いつか会えるだろうか、彼らに。



その機会は意外に早く訪れた。
バジルや家光が望んだような形ではなかったけれど。



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