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陽光の差し込む和室で目覚めたバジルは、半身を起こしてそっと辺りを見回した。

見慣れない部屋だ。
滞在しているはずの部屋とは違い、生活感というか、人の温もりを感じさせる部屋だった。

(昨夜は確か、霧のリング争奪戦に立ち会って、それから……)

昨日の自分の行動を思い出し、ああそうかと納得する。

ここは沢田家だ。
昨夜の霧の守護者戦の後、自分でも気が付かないうちに随分と疲労が溜まっていたらしく、顔色が悪いと真奈に指摘され、ここからなら自分達の家のほうが近いからと誘われて一晩宿をお借りしたのだった。

泥のように眠ったお陰か、体力はしっかり回復している。
体調がいい。
これなら今日の綱吉の修行にも支障は出ないだろう。

バジルが布団を丁寧に畳んでいると、誰かがこちらに向かってくる気配を感じた。

「バジル君、起きた?」

控えめな小さな声が襖の向こうから聞こえる。
真奈の声だ。

「はい」と答えながら襖を開けると、畳まれた洋服を抱えた真奈が立っていた。
長めのチュニックと黒いレギンスが、小柄で華奢な身体によく似合っていて可愛らしい。
陽光に透ける蜂蜜色の髪にバジルが眩しげに瞳を細めると、真奈は優しく彼に微笑みかけた。

「おはよう、バジル君」

「おはようございます、真奈さん」

挨拶を交わす。
たったそれだけのことなのに、何だか照れ臭いような、それでいて胸の奥がじんわりと温まるような不思議な気分だった。

「これ、バジル君の服。洗濯しておいたよ」

「す、すみません」

彼女は、敬愛する親方様の御息女。
そして、いずれ主君となるボンゴレ10代目の姉君なのに。
そんな方の手を煩わせてしまったことにバジルは深く恥じ入った。

「お風呂入る?昨日はお布団敷いたら直ぐに寝ちゃったでしょう」

「いいえ、そこまでお世話になるわけにはっ!」

「大丈夫だよ、気にしなくて。ツナも今朝お風呂に入って出掛けて行ったばかりだから」

「沢田殿が?」

「うん。ディーノさんがいる病院に行ったみたい。リボーンもその後直ぐに出て行っちゃったし、お母さん達も出掛けてて、いまバジル君と私だけだから、のんびりしていってね」

(──二人きり…)

バジルは気を引き締めた。
親方様のご家族は自分が守らなければ。
留守中に何かあっては申し訳がたたない。

「ありがとうございます。それでは、お言葉に甘えて、どなたかがお戻りになるまでご一緒させて頂きます」

「うん」

真奈は嬉しそうに笑って頷いた。

「お父さんの話、いっぱい聞かせてね」

「はい!」



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