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※同級生夢主



中学最後の年、なけなしの勇気を振り絞って一世一代の告白を決行した。

返事は、
「恋愛がどんなものかわからない」というものだったけど。
それが、子供の頃いじめっ子から助けてくれた時からずっと密かに温め続けてきた初恋の終わりだった。

彼の事を戦闘狂だのなんだのと呼ぶ者もいたけれど、本当にただ乱暴なだけの怖い男ならば、小さな動物があんなに懐くはずがない。
本当に大好きだったのだ。
だから、振られた時はショックだった。
わんわん泣いて暫くはまともに食事もとれないほど落ち込んだ。

あれから約十年。


「今日は子供の日だから孫に玩具を買っていかないとねぇ」

これから娘夫婦の家を訪ねるのだというおばあさんに持病の薬を渡し、真奈は「喜んでくれると良いですね。お大事になさって下さい」と送り出した。

患者を気遣う薬剤師として、ちゃんと笑顔を作れていたと思う。
胸の奥の古傷は鈍い痛みを訴えていたけれど。
五月五日。
今日は初恋の彼の誕生日なのだ。
まだ引きずっているのかと我ながら情けなくなる。

この前合コンに誘われて断った時も、まだダメージを引きずっているのかと、友達に呆れられてしまった。

その時はたまたま素直に理由を答えたが、いつもは勉強で忙しいのを理由に断るようにしている。

残念ながら人並み外れた天才的頭脳の持ち主というわけではなかったので、大学生活は殆ど勉強漬けの毎日だった。
薬科大学という特性上、他の大学に通う友人達とは微妙に話題にズレが生じるし、高校時代の同級生達が4年で社会に巣立っていった後はスケジュールもなかなか合わずに寂しい思いをしたものだった。

そして5年目の今、実務実習として実際に薬局の仕事に携わりながら卒業を一年後に控え、社会人の仲間入りを果たそうとしているところだ。


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