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ボンゴレの息がかかったホテルの庭園でお茶会が開かれたのは、ちょうど良い陽気の午後のことだった。

9代目が主催とあって、当然ながら集まったのはボンゴレファミリーの関係者ばかり。
面倒くせぇと嫌がるのを、ルッスーリアと真奈が二人がかりで何とか引っ張って来たザンザスは、嬉しそうな様子の9代目と親子水入らずの会話を交わしている真っ最中だ。

「日本の美容院は好きよ。仕事が丁寧だもの。特にシャンプーの技術はイタリアの美容師も見習うべきじゃないかしら」

小指をピンと立ててティーカップを持ちながらルッスーリアが言った。
ザンザスが席を外している間、護衛を兼ねて真奈の傍に付いていてくれているのだ。
話題は自然と美容に関するものになってくる。

「日本はシャンプーの時、リクライニングシートじゃない?こっちは普通の椅子だから首が疲れちゃうのよ。初めて日本に来た時、あんまり快適なんでびっくりしちゃったわぁ。あれじゃ寝ちゃう人もいるでしょうねぇ」

「うん、よくあるみたい。私もうとうとしちゃう」

「あら、やっぱり〜?特に担当がイイ男だったりすると、余計にうっとりしちゃうわよね」

ルッスーリアは片手を頬にあてて、オホホと笑った。

「ああでも、ブローはイタリアのほうが上かしら。センスもいいし、バリエーションも豊富だから」

「そうなの?」

「そうよ。今度一緒にどう? ボスの許可が出たら、私の行きつけの所に連れていってあげる」

「うん!行きたい!」

真奈は一も二もなく同意した。
彼のお墨付きならば相当腕の良いプロのはずだ。

一方その頃、ザンザスは彼にしては辛抱強く9代目の相手をしているところだった。
まだグラスも割っていないし、怒鳴ってもいない。
ただ不機嫌そうに腕組みしてムスッとしたまま話しを聞いてやっているだけだ。
それでも養父はとても嬉しそうだった。

「お前は本当に立派な男になった。私は心からお前を誇りに思うよ、ザンザス」

「ハッ、そんなことを言い出すなんざ、ついにヤキが回ったか。老いぼれたなジジイ」

「ああ、そうだね。私は本当に年を取った」

9代目は左手の親指と人差し指で摘まむようにして目頭を押さえ、小さく笑った。

「だが、まだ死ねないな。ボンゴレを背負う者としてまだやらねばならない事が残っている。それに、これからお前達が築いていく新しい時代をこの目で見届けたいからね」

まるで孫の顔を見るまでは死ねない、とでも言いたげな口ぶりである。

慈愛に満ちた優しい眼差しを真奈のほうへと向ける9代目に、ザンザスはますます不機嫌そうに顔をしかめた。
どうやら9代目は真奈の事を、息子の妻となる大事な女性であり、やんちゃな息子が一人前の男になる切っ掛けをくれた恩人だと考えているらしい。

9代目の視線を追ったザンザスは、ホテルの給仕スタッフらしき男がルッスーリアに何か話しかけているのを見て顔つきを改めた。
それ自体は別段おかしな光景ではなかったが、何かが勘に引っかかったのだ。
男に話しかけられたルッスーリアが立ち上がって何処かへ歩いていくのを見て、ますますその妙な感覚は強くなった。



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