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振袖を着た真奈は、リボーンとザンザスに挟まれる形で神社の境内へ上がる石段を上がっていた。

歳神様にあたる神社には、既に元旦に居候を含めた家族総出で初詣を済ませてある。
だからこれは言ってみれば、外国からわざわざ訪ねて来てくれたザンザスに日本のお正月の雰囲気を楽しんで貰う為の沢田家流のおもてなしのようなものだった。

ただ、リボーンが同行を申し出たことは真奈も予想外だった。
てっきりいつものように行ってこいと送り出してくれると思ったのに。
今日に限って「特別に俺も一緒に行ってやる」と言って有無を言わさずついて来た理由がいまいちわからない。
リボーンに聞いてみても、「気分だ」と一言で片付けられてしまった。

「まるで祭りだな」

「うん、夏祭りの時みたいだね」

参道の両側には出店が並んでいる。
筋肉で盛り上がった太い腕でわたあめを作っている店員を見て、真奈は自分の隣を歩く男達へと視線を移した。
どちらも迫力ある偉丈夫。
背中や腕にお絵描きしているおじさんやお兄ちゃん達の中に混ざっても違和感が無さそうだ。
そんな事を考えていると、ザンザスに腕を引かれた。

「おい、アレをやるぞ」

「あ、射的?」

「いいぞ。俺もちょうどやろうと思ってたとこだ」

赤い布が敷かれた木製の棚は、まるで雛壇のようにも見える。
雛人形の代わりに並んでいるのは様々な種類の景品だ。
最上段には、どう考えても射的用の銃では撃ち落とせそうもない特大サイズのぬいぐるみが四匹ほど鎮座していた。

「真奈、お前はどれが欲しい?」

「じゃあ、あのくまのぬいぐるみがいい」

「いいぞ。俺が取ってやる」

「引っ込んでろ、カス。あれは俺が取る」

「お前に取れるのか?」

「俺に撃ち落とせないものはねえ」

「どうだかな。口だけなら何とでも言えるぞ」

「ハッ、そりゃテメェの事だろうが」

「もう…喧嘩しないの!」

気のせいか、男達の間に火花が飛び散ったのが見えた気がした。
睨み合う二人に「はい」と銃を持たせ、お財布から二回分の代金を取り出して店主に支払う。
じゃんけんで順番を決めた結果、先行はザンザスになった。
彼の構えた銃がパン!と鳴り、真奈が見守る前で巨大なぬいぐるみが後ろにのけぞった。そのまま棚の向こう側へ落ちていく。

「わあ!凄いっ!ライフルでスナイプしたみたいだね!!」

「狙い撃ちしたのはくまさんだけどな」

次は俺の番だ、とリボーンが銃を構える。

初めて見る真剣な表情。
獲物を狙う肉食獣のようなその姿にドキンと心臓が跳ねた。
鋭い眼差しが見つめる先には景品がある。
標的に対するときもこうなのだろうか。
今狙っているのはくまさんだけど。

もちろん結果は解っていた。



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