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「ほら、戦利品だぞ」

「ありがとう!」

既にくまさんを一匹抱きかかえていた真奈は、更にもう一匹渡された事で完全に前が見えなくなった。
残り二匹はザンザスが脇に抱えている。
リボーンもどっさり景品が入ったビニール袋を手に提げていた。

「おい、カス。さっさと景品を補充しろ」

「も、もうありません…」

涙目になって怯える店主に舌打ちしたザンザスを宥め、店主にぺこぺこと頭を下げて、真奈は大人二人を引き連れて家路についた。
ぬいぐるみを一匹リボーンが持ってくれたので視界は確保出来たが、行きよりも当然歩みはゆっくりになる。
それでも家までの距離が短く感じたのは、真奈の中に名残惜しく思う気持ちがあったからだろう。
強敵を相手にする時に仕方なく共闘する以外で、この二人が顔を揃えて一緒に出掛けるなんて普段では考えられないことだ。

真奈は実はこの二人は意外と似ているんじゃないかと思っているのだが、そんな事を言った日にはきっとどちらも思いきり嫌がって否定するに違いない。

自宅の前まで来ると、そこには車が一台止まっていた。
真奈にぬいぐるみを押し付けたザンザスの前で後部座席のドアが開く。

「えっ、ご飯食べていかないの?」

「カスどもと飯なんざ食えるか」

ザンザスは鼻で笑い飛ばし、ぬいぐるみに埋もれた真奈を傲然と見下ろした。

「お前がついて来るというなら別だがな」

「そうはいかねーぞ」

いつの間にか銃を握ったリボーンがザンザスに真っ直ぐ銃口を向けていた。
今度は射的用の玩具ではない。
チェコ製のCz75の1ST。リボーンが愛用している正真正銘本物の銃だ。

「俺の宝をそう簡単に奪えると思うなよ、ザンザス。欲しければ次は死ぬ気で来い」

激怒するかと思われたザンザスは、先ほど真奈の言葉を笑い飛ばした時のように鼻で笑っただけだった。
最初に出会った頃の彼ならば、きっと今頃「かっ消す!!」となっていたはずだ。

「首を洗って待っていろ」

ぬいぐるみの合間から自分を見上げる真奈の目を見据えて、ザンザスが静かな声で告げる。

「次は攫いに来てやる」

そのまま車に乗り込んで去っていった後も、真奈は呆然として立ち尽くしていた。

「……攫いに来るって……」

「ああ、言ってたな」

「どうしよう…」

「安心しろ。嫌なら俺が守ってやる」

普段と変わらぬ口調でそう言ったリボーンに頭を撫でられる。
赤ちゃんだった時も頭を撫でられた事はあるが、大きな手で撫でられるのは不思議な気分だった。

「帰るぞ。ママンが待ってる」

「う、うん」

自分でもよくわからない感情を持て余しながら、真奈は抱えたくまのぬいぐるみをぎゅっと抱き締めた。



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