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ちょっとそこまで、のノリで気楽に行けるのがコンビニの長所だ。

沢田家の近所にあるコンビニは、住宅地の中にあるお陰か客の入りが良い。
学校帰りに真奈が入っていった時も、やはり学校帰りに立ち寄ったと見られる近所の中学生や子供連れの主婦で店内は活気づいていた。

家に帰る前に今日発売の新刊とテレビで見た新作スイーツをチェックしようと思って入ったので、真奈はまずは雑誌のコーナーに向かった。
『本日発売!』の棚にあった料理雑誌を手にとり、パラパラと捲る。

(今週は“彼氏に作ってあげるご飯レシピ”かあ…)

リンゴページの最新号には、しょうが焼きやすき焼きなど、男性が好みそうなボリュームのあるメニューが特集されていた。
これだけだとちょっとカロリーが心配だな、お野菜を沢山つけないと、などと考えながらページを捲る。

──と、雑誌を読んでいた真奈のポケットの中で、ぶるぶると携帯電話が震えた。
雑誌を開いたまま片手で取り出して通話ボタンを押す。

「もしもし?」

『ハァ〜イ、真奈ちゃん。今どこ?』

ルッスーリアの声だ。

「えっ…と、家の近くのコンビニの中」

突然の電話に驚きながらも素直に応える。
何だかデジャブを感じるやり取りだ。

ふと開いていた雑誌の上に影が落ちる。
なんだろう?と振り返った真奈の後ろに立っていた男の赤い瞳とバッチリ目が合った。

『そろそろそっちにボスが着く頃だと思うんだけど』

「うん…いま目の前に立ってる」

答えるや否やザンザスに携帯電話を奪われる。
さっきは気付かなかったが、窓の外の駐車スペースには黒塗りの高級車が停まっていた。
あれで来たに違いない。

『こっちは準備OKよ。お姫様は?』

「捕獲した」

そうか、自分は捕獲されたのか。
ザンザスに小脇に抱えられてコンビニから運び出されながら、真奈は自身の置かれた状況を理解した。



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