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ザンザスに拉致された先は都内でも有名な、海外ブランドの店が立ち並ぶ場所だった。
最近はファストファッションの進出により、町のイメージが変わりつつあるが、やはり昔ながらの名店が立ち並ぶセレブ感漂う町であることに変わりはない。

その高級店のひとつに連れて来られた真奈は、一般客用のフロアの下にあるVIP用のフィッティングルームにぽいと放り込まれた。

「いらっしゃ〜い。待ってたわよん」

語尾にハートマークが付きそうな台詞で真奈を出迎えたのはルッスーリアだ。
待ち受けていた彼と女性店員により、真奈は身ぐるみを剥がされて次から次へと試着をさせられた。

「可愛いわよ真奈ちゃん。あん、でも、こっちも捨て難いわねぇ」

「衝立てが邪魔だ。見えねえだろうが」

「見ないの!」

「どうせ後で脱がして見る」

「見ないの!」

恐ろしげな風貌の男と少女の微笑ましいやり取りに、女性店員達は必死で笑いを堪えている。

結局、あれでもないこれでもないと着せ替えられた末に決まったのは、ワンピースとボレロだった。
パーティードレスと呼べるほど華美ではなく、普段使いにするには上等過ぎる。
それなりに高級な店で食事をするためにはぴったりの服だ。

「ダメだよ、こんな高そうな服…!」

「わからねぇな。何故欲しいものを我慢する必要がある」

ザンザスは心底不思議だというように慌てる真奈を見下ろした。

「お前は俺が選んだ俺の女だ。お前には欲しいと思うものを得る資格がある」

そこで真奈は諦めた。

妥協などしない。
努力を惜しまず、手段を選ばず、己の意思を押し通す。
この男のそんな揺るぎない強さに惹かれたのも自分なら、その暴君っぷりに困らされるのもまた自分で選んだ道なのだから。

そういえば、前にもこんな事があった。
あの時もやはりルッスーリアの号令により、わらわらと群がってきた女性達に群がられて、なんでそんな所までと思うような場所まで全身隈無く採寸されたのだ。
そのときの事を思い出した真奈の胸はきゅうっとなった。
何のための採寸だったかというと、ウェディングドレスを作製するために必要なデータ収集だったのだ。

来年の今頃には、真奈は人妻に──ザンザスの妻になっている。



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