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唐突に、男の名前を呼びたい、と思った。
こういう時にはそうするものだろう。

相変わらず聖羅を組み敷いたままの男を振り返って口を開くが、何故か肝心の名前が出てこない。

端正な顔を見つめながら困って黙り込んでしまった聖羅の蜜部からずるりと指が出ていった。

反動で跳ね上がる聖羅の身体を反転させて、足首を掴んで脚を開かせると、男は長身を折るようにして聖羅に顔を近付けた。


「蔵人、ですよ」


ほっと笑顔になったのも束の間、指で丁寧にほぐされ柔らかくトロトロに蕩けたソコへ男が入り込んでくる。
その衝撃に聖羅は背中をしならせた。

慣らされていたとは言え、ほぼ一息に根元まで入り込まれて、瞳に涙が盛り上がる。
男の柔(やわ)い舌先がそっとそれを舐めとった。
切れ長の美しい瞳が愛おしげに笑んでいる。


「可愛らしい方ですね…」


次々に溢れる涙を吸いながら、男はゆるゆると腰を使った。
奥深くを突いては、抜け出すくらいまで入口近く腰を引き、また一気に最奥まで責め上がる。
それは、何故か鋭利な刃物で繰り返し獲物を抉る動きを連想させた。
「蔵人、さん……蔵人さん……蔵人っ……」


喘ぎに混ぜて、教えられた名を呼び続ける。

男はそれで更にたかぶったようだった。
もともと狭いナカいっぱいに存在を主張していた男の部分が、内腑を押しやるほどに体積を増す。


「…貴女は私のモノだ」


荒い息が耳に吹き込まれ、そのまま舌が耳腔をねっとりとねぶる。

限界が近いのか、男の動きが一段と激しくなった。
ただ寄せては引く波のようだったのが、時折円を描くように腰を使っては上下に揺さぶり、聖羅を翻弄していく。
抗いようのない快楽に聖羅は男にきつく縋りつき、その名を叫びながら登り詰めた。
力強い腕に抱きしめられ、胎内に熱い迸りを感じる。
絶頂の悦びにヒクヒクと痙攣する襞を、男は逞しい自身で宥めるように優しく擦った。
最後の一滴まで絞り出すかのように。


「大丈夫ですか?」


早い呼吸に上下する胸に、乱れた息を吐き出す唇に、男は優しく口付けて聖羅を労る。
綺麗な顔に満ち足りた微笑を浮かべて、何度も何度も繰り返し唇を寄せながら、


「きっと、貴女に良く似た可愛い赤ちゃんが産まれますよ」


大きな手が優しく腹を撫でた。


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