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ヒナのときからずっと育ててきて可愛がっていた鳥がいなくなってしまった。

正確に言うと、双子の姉が逃がしてしまったのだ。
籠から出たそうにしていたから開けてあげたら逃げてしまったということだった。

「外に出られたんだから、今頃自由になって喜んでるんじゃないか?」

泣いて謝る姉を父がそう慰めるのを聞いて、私は抗議した。

「そんなわけないよ! ずっと人間に守られて家で飼われてたのに、突然外に出て生きていけるわけないじゃない! 大きい鳥とか猫とかに襲われるかもしれないのに…!」

「いい加減にしなさい。お前がそうやっていつまでも大袈裟に騒いでいたら姉さんが気にするだろう。鳥なら新しいのを買ってやるから」

「あの子の代わりなんかいらない! 誰もあの子の代わりになんかなれないよ!」

私はそのまま家を飛び出した。
まだ父は何か言っていたが聞こえないふりをした。

視界が涙で歪み、胸は張り裂けそうに痛んでいたけれど、あの子はもっと心細い思いをしているはずだと思うと少しだけ冷静になれた。


私と姉は一卵性の双子で、外見はそっくりだけど、明らかに出来の良さが違っていた。

人によってはほんの少し会話を交わしただけでも出来の違いがわかるらしく、怪訝そうな顔をされたりするのも慣れたものだった。

親を含む周りの人達には、優秀な姉と残念な妹として認識されているだろう。

例えば、編み物に興味を持ったとする。
私が本を見ながら四苦八苦しながらマフラーを編んでいると、後から始めたはずの姉があっという間にマフラーを完成させてしまうのだ。
そして、友人達に「凄いね」「さすがだね」なんて誉められている姉の姿を私はしょんぼり眺めることになるのだった。
しかも、それでも頑張って何とか最後まで完成させたとしても、姉の作ったものに比べて遥かに残念な出来の物だったりするのだから、自信もなくなるというものである。

姉と好みが似ているせいで悲しい思いをすることも多々あった。

その私が自分だけで育ててきたのがあの鳥だった。

あの子は、私にとっては幸せを呼ぶ青い鳥よりも大切な、世界でたった一羽だけの鳥だったのだ。


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