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広い公園の中を走りながら、あるものを探して辺りを見回す。

私は街灯の下に目的のものを見つけてそれに駆け寄った。
昔ながらの電話ボックスだ。
携帯電話が普及している最近では、こうした公衆電話はあまり見かけなくなっていた。

財布を取り出すのももどかしく十円を震える指で摘まんでスロットに投入し、ボタンを押していく。
プルプルプル、という待機音に続いて、「…はい」と訝しげな声が応答した。
姉の声だ。

「お姉ちゃん!」

『聖羅!? びっくりした! どうしたの? 公衆電話だから誰かと思ったよ』

「あの、あのね…」

気ばかりが急いて、うまく頭が回らない。
自分にほんの半分でも姉の聡明さがあれば、きっともっと分かりやすく説明出来ただろうに。

「実は──」

言いかけて、はたと気が付いた。

知らない人に声をかけられた。
そしてその男は、何だかよく分からないけど危険人物であることは確かなようだ。

でも、そんなことを言ったら、今度は姉の身が危険に晒されることになるのではないだろうか?

「……ううん、何でもない。ごめんね、変な電話して」

姉が何か言っているのが聞こえたが、そっと指でフックを押した。
受話器を置き、深く長く息をつく。

振り返ると、すぐ真後ろに赤屍さんが立っていた。
ギョッとして固まる私の前で、切れ長の双眸がゆるりと細められる。

「お話は終わりましたか?」

「…は…はい…」

「では行きましょう」

逃げて、逃げて、逃げて、必死で逃げ続けて。
いつの間にか同じ場所をぐるぐる回っていた事に気が付いた…とか、ソレ系の恐怖だ。


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