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ヘヴンに連れられてやって来た店は、カップルで来るよりも女同士で来て飲むのに適したお店といった感じのダイニングバーだった。

甘すぎない雰囲気と、居酒屋のチェーン店のような騒がしさがない点も好感が持てる。

「彼氏さんともよく来るんですか?」

「ん〜?柾とは来ないわねぇ、そういえば。好みがちょっと違うのかも。だからここは女同士で話したい時専用」

ウフフ…と色っぽく笑ったヘヴンは上機嫌だ。
ちょっとグラスの進み方が早い気がする。
それなりに酒には強いようだが、あまり飲み過ぎたら酔っ払ってしまうんじゃないだろうか。

そんな心配をしていたら、後ろから「おや」と声がかかった。
振り返ったヘヴンが「あら」と答える。

「奇遇ですね」

「ほんと。赤屍でもこういう店に来るのね」

「仕事の打ち合わせでしてね。丁度さっき終わったところです」

アカバネと呼ばれた男と交わされる会話を、さりげなく他所を向いて聞こえないふりをする。
自然に見えるように自分のグラスを持ち上げた瞬間、ゾクッと寒気が背中を走った。

振り向けば、直ぐに交わる視線。
見るからに胡散臭い薄笑いを浮かべて、男が聖羅を見下ろしている。
蛇のようだと思った。
それも、毒のある大蛇。

「貴女も今日は依頼の仲介で?」

「違うわ、彼女は一般人。とびきり腕のいいマッサージ師さんなの。ウチに来て貰った帰りにお酒をご馳走してたのよ」

「そうでしたか」

やや弱まったものの、視線はまだ絡みついてくる。

薄笑いを浮かべる男の第一印象は、『生たまごを丸飲み出来そう』だった。
嚥下する際に喉仏が動く様もリアルに想像出来たぐらいだ。

随分背が高い。たぶん185センチ以上はあるだろう。

どちらかと言えば間違いなく細身に分類されるが、痩せのノッポというわけではない。
たぶん肩幅が広くてしっかりしているのと、手足がすらりと長いこと、そしてちゃんと筋肉がついているためだ。
凄くバランスがいい。
こういう体型を逆三角形と言うのだろう。

いわゆる“ゴリマッチョ”には当てはまらない。
さりとて、“細マッチョ”かと言われれば、そうとも言いきれない。
ボディビルダーや趣味でジムに通っている男性のそれとは違い、筋肉のつき方が非常に実用的なのだ。

必要な動きに必要な筋肉を必要なだけ身につけている。
そんな印象を受ける肉体だった。

それでいて、腰なんかは羨ましくなるほど細くくびれている。


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