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「そろそろ良さそうですね」

耳にかかっていた髪を指で優しく梳いて流すと、耳たぶを摘まんで軽く引っ張り、中を確認する。

初めは外側から。
複雑な形をしている耳の表面をカリカリと掻く。
耳の外側に触れたそれは、最初少しひやりとした感触で冷たかったが、すぐに体温に馴染んで気にならなくなった。

一通り外側を綺麗にした後はいよいよ内側へ。
穴の入口付近から順番に焦らすように奥に向かう。
すう、と差し入れては耳の内壁を掻いて手前へと引き戻す。

カリ…カリカリ…スー……カリカリ…

それを何度も繰り返される内に、何とも言えない心地よさに聖羅はうっとりとなってしまった。
ただでさえ眠かったのが更に加速されていく。
それが赤屍の目的だったのだ、と悟った時にはもう遅かった。
身体にはいつの間にかブランケットが掛けられている。
その柔らかい感触と温もりがもうどうしようもないほど眠気を急加速させた。

耳かきは普段自分では届かない鼓膜近くの場所に到達し、触れるか触れないかの絶妙なタッチで耳垢をかすめとっている。
また中程へ戻っていく途中、チリッとした感触があったのは、大きな破片が剥がれたのだろう。
それが取れてしまえば、スーッとしてすっきりした感じだけが残った。

「ん…」

「…クス」

もう、なに笑ってるんですか。
そう言いたかったけれど、もう声も出せない。
あたたかい。
気持ちいい。

「…赤屍さ…ん…」

殆ど寝言と変わらない呟きを最後に意識が途切れる。


恋人の呼吸が寝息に変わったのを感じとると、赤屍はブランケットごと彼女を抱えて寝室へ運んでいった。


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