緋色の姫(降谷零) | ナノ


04


「おっと、おめかしして、デートかい?やっと王子様に会える時間できたのか!」

『秀くんと会えたのって大学生のときに日本の海水浴場に家族で行ったきりなの。デートなんて本当に何年ぶりかしら。』

「だいぶ浮かれてんな。まぁ、王子様をイチコロにしてこいよ。俺は、何か可愛い妹が彼氏とデートに行くときみたいな感情だよ。」

『何言ってるのよ。ノアは近所のおじさんってところよ。』

ひどっ!というノアの叫びを無視して、約束の場所に向かうことにした。

*****

『秀くん!』

何年ぶりかに会う秀くんの髪は私より長くなっていた。相変わらず悪人のような悪い目付きだが、私に向けるときは優しさを感じるこのグリーンの瞳が大好きなの。

「真咲、綺麗になったな。」

『フフッ、私もう29よ。会いたかった!!ずっと任務でアメリカいたのに、仕事忙しくて全然会えないんだもの。』

「MI6はどうだ?こっち程ではないと思うが危険なんじゃないか?」

『危険なんて平気よ。ほとんど書類とか事務作業だから。それに、秀くんと会えたら何でもできる気がしてくるもの。』

「そうか。だが、俺が心配で気が気じゃないんだ。しかも、よりによってイギリスに行くとは…。どうせなら目の届く場所にいてほしかったのだが、相変わらずお転婆のようだ。」

秀くんの腕に私の腕を絡めて密着しながら歩く。何となくピリピリした感じがするのは通り魔の報道がされた場所の近くだからだろう。しかし、その通り魔はベルモットだということを私は知っている。

何せ、私も黒の組織に潜入しているから。勿論、ライのことは知ってるし、秀くんがノックだとバレてしまったこともそう。一方、彼の方は私、ロゼの事を知らない。ロゼは情報メインの仕事を担っている組織の情報屋のようなものだから仕方ないのだけれど…。面識のある幹部はジンとベルモットしかいない上に変装をしているから素顔を知っている者はいない。勿論、宮野明美の事も調べて少し接触もしたわ。

だって、秀くんの恋人なんて気になるもの。

「通り魔がいるらしいから、気を付けろ。」

『えぇ、怖いわね。それに、通り魔の情報が入ったら秀くん行ってしまうでしょ?折角会えたのに、何で今日に限って…タイミング悪いわ。』

「すまないな。」

抱きつくと優しく頭を撫でてくれる。端から見れば、カップルがイチャついているようにしか見えないが、私たちは兄妹であって、親愛しかない。その親愛も度を超えてるという自覚はあるのだけど…。

ショッピングを楽しんだり、カフェでお茶をしたりと楽しい時間はあっという間に過ぎていった。

「真咲、時間だ。送ってやれないが、気を付けて帰れ。」

『…わかったわ。久しぶりに会えて嬉しかった。秀くんも気を付けて。』

「Good girl.」

本当はもっと一緒にいたいが、仕事なら仕方ない。引き留めて困らせたくないし、私もいい大人だ。秀くんが去っていく後ろ姿を見て唇を噛む。

「へー、我慢するなんて偉いな。」

『ノア、いつからいたのよ。』

「ついさっきだ。…こっちも仕事だ。」

『オーケイ。』

*****

ノアと一緒にイギリスの本部に戻れば、ボスに日本行きの命を受ける。

『急すぎるわ。休暇も兼ねてとか言いつつ本格的に組織で動かせる為でしょ。それに、女王からの任務はどうするのよ?』

「まぁまぁ。ボスって昔、スーパーモデル真咲様のファンだったらしいし、日本に戻ったらモデル活動再開すればいいじゃん。それに、この日本行きはエリザベス女王からのお達しだ。」

『それなら行かないっていう選択肢ないじゃない。だいたい私29でもう三十路手前なのよ?モデルなんて大丈夫かしら?』

「なぁに、姫の美貌と過去の栄光があればいけるさ。俺も一緒に行くから美味い店紹介してくれよ!」

こっちは、再び秀くんと距離を置かないといけないのに、何て呑気な男なんだという思いから白けた視線を向けてしまった。

「おいおい、可愛い顔が台無しだぜ?」

そして数日後、日本に戻った如月真咲が芸能界に復帰したというニュースで、日本中が歓喜で包まれた。


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