ミュージカル語り(CHESS)

「マンマ・ミーア!」のABBAのメンバーが作曲を手掛けたミュージカル「CHESS」。東西冷戦中に行われたチェスの世界大会を舞台にした、民主主義と社会主義のイデオロギーのぶつかり合いと男女の縺れを描いた作品です。

これだけ聴くとものごっつ取っ付きにくそうなテーマに思えますが、曲はどれもキャッチーでセンセーショナルで、時々ゾクッとするようなサウンドもあり、心をぐっと掴まれるものばかりでした。作品のテーマソングの“Anthem”は言うまでもありませんが、“One Night in Bangkok”は通勤中に聴くとめちゃくちゃテンション上がります。ただ、どちらも哀しいことにいまいち日本では馴染みのないナンバーかな……。管理人も恥ずかしながら、今回の公演で初めてこの演目のことを知ったくらいです。

そんな(言葉は悪いですが)マイナーな作品をどうして観に行く気になったのかと言うと、出演キャストが豪華だったから、その一点に尽きます。ラミン・カリムルーにサマンサ・バークス、ルーク・ウォルシュなど、豪華というか超々々々々豪華というか、このレベルのキャストの共演を東京だけでなく大阪でも見られるなんて、大袈裟でなく一生に一度あるかないかの奇跡だと思うんですよ。ミュージカル界を代表する世界的スターの共演とあれば、ミュージカルファンなら行かないわけにはいかない!1曲も内容知らんけど!!くらいの気持ちで行ったんですが、ガチのマジでチケット取ってよかったです。

楽曲のレベルの高さ、演出のクールさ、ストーリーの面白さは勿論、何と言っても歌がやばい。ミュージカルはお芝居もダンスも重要な要素なんですけど、やっぱり歌がうまくなけりゃ話にならないんですよね。その点、この公演は「この金額でこんなに素晴らしい歌を聴いててもいいの?」って思えるほど歌のレベルの高い方たちばかりでした。サマンサ演じるフローレンスの“Nobody's Side”もルーク演じるフレディの“Pity the Child”も客席がざわついていましたが、1幕ラストでラミン演じるアナトリーが“Anthem”を歌い上げた瞬間、劇場全体が揺れたかと思いました。説明不要の圧倒的歌唱力。圧倒的声量。そこまで体格がいいとも言えないのに、一体どこからあんなエネルギッシュな歌声が出せるんだろう。日本人だと山口祐一郎さんが会場に轟くような歌声の持ち主ですが、今回のプリンシパルの皆さんの歌声は更にパワフルでのびやかで、歌で殴られるという表現がピッタリでした。あれだけ自在に高音も低音も操って歌えたら気持ちいいだろうなー。アービター役の佐藤さんやモロコフ役の増原さん他、日本人のキャストさんもアンサンブルの方たちもすっごく完成度高くて、本当にハイレベルな共演だったなあと改めて思います。

2/1からは東京公演が始まりますが、関東にお住まいの方でミュージカルに興味があって、ちょっと気になってるけどどうしよっかな、と迷われている方は、ぜひぜひ観に行ってください。絶対後悔しません。(突然の宣伝)何なら私がもう1回東京まで観に行きたいレベル。今後もしも日本でミュージカル版が上演される機会があれば、そちらも観に行ってみたいと思うくらい好きな演目になりました。

2020/01/30 14:54