結局、好きとか嫌いとかそういうのは未だ分かっていない。 正直、分からなくても別にいいとは思ってる。 だけど、あたしが土方のことをみんなと同じように思っていないのは分かった。
恋人と友達の境界線や、恋愛と友情の境界線が分からない。 だからといって、あたしに何か問題があるわけではないからそんな急いで分かる必要はないんだと思う。
…思う。だからまだそこも分からない。 あたしには分からないことだらけだ。
「おはようございまさァ、優梨。朝っぱらからボケっとしたツラ。笑えまさァ」
「なっ…!!ふざけんじゃないっつーの!アンタも朝っぱらからそのドSヅラ見飽きたっての!」
朝から教室の前でガヤガヤ騒ぐあたしと沖田。 元々、あたし達のクラスはうるさいからあたしと沖田が騒いだってなんてことない。 だって、たかがあたし達が騒いだところでクラスのうるささには叶わないんだ。
「おはようアル、優梨。オイ、サド!優梨に近づくんじゃないヨ!!優梨、こいつに近づいたらサドが移るネ。早く逃げるアル」
「あ、うん」
沖田にべーっと舌だしして神楽と一緒に教室の中へ入っていった。 沖田はあたしのことを追っかけてくるかと思ったけど全然そんな感じではなく、むしろずっと同じ場所で立ち止まっていた。
でも、それには多分理由があったんだ。 例えば、土方が来た…とか。 まあ、別にどうでもいいんだけど。
「珍しいアルな。優梨がサドといるなんて」
「あ、やっ…別にいたくていた訳じゃないし…。その…沖田が勝手に話しかけてきたっていうか…」
「分かってるネ。優梨が自分からサドんとこ行くわけないアル」
「う、うん!そうそう、そうなんだよね!!」
ハハッと苦笑する。 神楽は馬鹿だけど意外に鋭いところがあるから、あなどれない。 神楽の言葉で何か分かるんじゃないか、と思ったこともあった。
でも、結局神楽は馬鹿だから。何も分からなかった。 最終的には適当に片付けるのが神楽。 あたしはそんな神楽が好きだけど。
「優梨ちゃん、最近はどう?土方くんとは」
「どどど、どうって…。べ、別に元々アイツとはな〜んもないしね。」
「そうやってツンツンしてるけど、実は中身デレデレなこと私は知ってるネ」
「デレデレもツンツンもしてない!」
顔を真っ赤にしながら言うあたしを神楽と妙ちゃんは面白がってからかっている。 いつものことだからどうってことないんだけど。 あたしと神楽と妙ちゃんがギャーギャー騒いでいると土方が教室へ入って来た。
心臓がドクンとはねた。
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