安藤家に戦国乱世からやって来た新しい住人が増えた。
男の名は松永久秀。

和やかなはずの朝の食卓にピリピリした緊張感がみなぎっているのは気のせいではない。
特に政宗と小十郎、そして半兵衛は警戒心を露にしていた。

無理もないなと佐助は思う。
およそ好感のもてる人物ではない。主にその鬼畜の所行のせいで。

「彼女は本当に卿の情人ではないのかね?」

味噌汁の椀を手に穏やかな声音で松永が半兵衛に問う。

「ああ」

半兵衛は即座に肯定した。
今はまだ、と内心で付け加えたのが佐助には聞こえた気がした。

「では私が彼女を褥に誘っても構わないという事だな」

「ぶふぉッ!?」

元親がむせた。
その正面に座っていたせいで噴射した味噌汁を顔面に浴びた政宗のアメリカンな罵声が響き渡る。

もぐもぐとかまぼこを食していた天音が、ごくんとそれを飲み込むと、松永のほうを見もせずに口を開いた。

「いやですお断りします」

「つれないな。一度味わってみるのも悪くないものだと思うがね」

「いやですお断りします」

松永の言葉にショックを受けて呆然としていた半兵衛が、ようやく我にかえって松永をきつく睨みつけた。

「貴方はっ…! 彼女を遊女か何かのように扱うつもりか!」

「それは誤解だ。卿のような清廉な男には理解出来ないかもしれないが、世の中には、まず男女の仲になって身体の相性を確認してから始まる関係もあるということだよ」

「だからと言って──」



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