「いやはや、しかし、軍師殿と違って君は冷静だな、天音」

松永は面白がっている口調で言った。

「その落ち着きはどこからくるのかね? 彼にはまるで初心な少女の如き恥じらいを見せるというのに、私の誘いをあしらうその様はもの慣れた女のようでもある。どちらが君の本当の姿だ?」

「どちらもなにも、半兵衛さんと別に何とも思ってない男の人に対してまったく態度が同じってことはないでしょう」

「ふむ。つまり、好いた男とどうでもいい相手との差といったところか」

「どうでもいい相手って自分で言っちゃったよこの人…」

傍観しようと決めていたはずの佐助だが、思わず突っ込んでしまった。
己のツッコミ属性が恨めしい。

「…………は、」

ふと佐助の横から声がした。
幸村だ。
その顔がみるみる赤く染まっていくのを見て、佐助はヤバいと焦った。

「は、は、破廉恥でござるぁあああああああああああーーーーーーーーー!!!!」

家の屋根が吹っ飛ぶかという勢いで幸村が叫んだ。



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