▽ 始まり
見知らぬ森の中に、私は一人立っている。
不思議な色の小鳥達が飛び回り、見たこともない植物が生い茂る森の中。
全く知らない場所なのに、自然と恐怖は感じなかった。
「…キ………ラキ……」
『……何?…誰かそこにいるの?』
名前を呼ばれた気がした。その声の聞こえる方に目を向けてみるものの、そこには何もおらず、只声が聞こえるだけだった。
「……ラキ」
『ねぇ、誰なの?』
「ラキ、次は必ずお前を守る。だから……」
声の持ち主に会わなければならない気がした。
声の元に近づこうと走り出したが、見えない壁の様な物にぶつかり、行く手を阻まれる。
『痛っ!!…何これ………壁?』
見えない壁は蹴っても叩いてもびくともしない。
周りにいる小鳥達は通る事が出来るのに何故か自分だけが通る事が出来ない。
『どうしよう…このままじゃ』
「どれほど時間が掛かったとしても、必ず見つけ出す。だから…だから待っていてくれ」
『ねぇ!聞こえないの!?』
「それまでゆっくりお休み、ラキ」
『待って!』
"パチン"と指を鳴らす様な音を最後に、目の前の気配は消えてしまった。
気配が消える瞬間、 青く光る物を見た気がした。
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