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流れる楽しげな音楽。
賑わう人々。
そう、俺達は今日、遊園地に来ている。


「わぁ、人がいっぱいいるねぇ」


傍らでは、名前が楽しそうに辺りを落ち着きなく見回していた。
隣の席で、授業中いつも隠れて菓子を食べている名前に、俺は世間で言う‘片思い’というやつをしている。
ほっぺたいっぱいに菓子を頬張る姿を、いつも見つめていた。

「遊戯君達、来れなくて残念だねぇ」


この俺が教室で遊園地のチケットを渡した時、名前はあろうことか遊戯達まで誘おうとした。
全力で阻止(凡骨のバイト先を買収しシフト入れまくり、適当なデュエル大会を開催、子会社のブランド店にてバーゲン開催等)して、やっと二人きりで遊園地に来れたのだ。
片思いとやらは随分と金がかかるものだ。


「名前、乗り物に乗るぞ」


「そうだね」


そう言いながらも、さりげなく名前の手を握り、俺は歩きだす。
そう、あくまでさりげなくだ。

「ねぇ、海馬君…」


「なんだ」


手を繋ぐことを嫌がられるかと思い、振り返ると、名前が妙に勝ち誇った顔をしていた。


「迷子になっちゃうのぉ?」


「フン、貴様が迷子にならないように繋いでやっているのだ」

「あたしは大丈夫だよ。だって、ちゃんと迷子センター行けるもん」


自信満々で勝ち誇った笑顔を向ける名前。
どうやら、手を繋ぐのは必須だったようだ。


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