そのまま手を繋ぎ、名前のペースで遊園地内を歩く。
ふにふにとした柔らかくて暖かい感触に、妙に名前を感じてしまう。
当の名前は平気な顔をしていた。
「海馬君見て!すごいよ!」
指を指す先はジェットコースター。
人々が皆絶叫していた。
「フン、ではジェットコースターに乗るぞ」
「うん、そうだね」
ジェットコースターまで行き、係員に案内され、乗り込む。
危なっかしい名前に手を貸してやり、隣同士で座る。ゆっくりと動き出したところで名前が口を開いた。
口から出た言葉は、衝撃的な言葉だった。
「あたし、酔うんだけど平気かなぁ?」
小首を傾げながら俺を見つめている。
「何故もっと早く言わんのだ」
「…それもそうだね」
時すでに遅し、ジェットコースターは動き出し、加速している。
俺は心配になり、隣に座っている名前を見ると、絶叫することなく、虚ろな表情を浮かべていた。
絶叫するどころではなさそうだった。
非常に長く感じたジェットコースターからようやく解放され、名前をベンチに座らせ、俺は飲み物を買いに走る。
ジュースを手にベンチに戻ると、名前は青い顔をしながら、ベンチの背もたれにもたれかかっていた。
「大丈夫か?」
「…うん、ごめんね」
飲み物を受け取りながら、申し訳なさそうな顔をしている。
俺は名前の隣に腰掛け、買ってきたコーヒーを口にする。
「心配するな、いい初デートの思い出になる」
隣を見ると、名前が大きな目をさらにまん丸にしていた。
フン、俺の度量の大きさに驚いたか。
満足し、コーヒーを口にする。
「え!?デートだったの!?」
思わず俺はコーヒーを吹き出しかけた。
「デートじゃなかったらなんだと言うのだ!」
「え、友達に遊園地に誘われた、でしょ?」
無邪気に答える名前の姿に、俺はがっくりとうなだれた。