ししのこころとたんきゅうのかぜ | ナノ


遥影


相変わらずスコールは脳内会議中

スコ→バッツ




****


ただ吹き抜けて行くだけの、風。
目に見えないものなのに、その存在は確かにそこにあって、だけどその形は常に違う姿をしている。
時に繊細で穏やかで心地良く、時に悪戯に牙を剥くこともある。


捉えるのが、難しい


「どした?」

気がつくと、独り立ち止まっていた。
二三歩先を行ったところで、振り返ったバッツに問われて我に返った。

「少し…考えていた」
「考え事?」
「バッツ」
「うん?」

パタパタと戻って来て、うつ向きがちのスコールの顔を覗き込む。

「アンタは、風のようだと…」
「俺?」

(いつも違う顔を見せる)

「風?」
「…」

こくりと、顔で頷いて見せる。

(だから、一緒に居ると退屈しない)

「どゆこと?」
「うまく…説明は出来ない」

何となくそう思った、とスコールは誤魔化した。
水面下で揺らぐ想いまでは語らなかった。

「風、か…」
「だから…」

(ふらっと…何処かに飛んで行ってしまいそうで…)

この手を放したくないと?

(俺は…)

放してしまったら、二度と触れられないような気がして?

「スコール?」
「いや…、なんでもない」

曖昧に言葉を濁して、スコールは再び黙ってしまった。
フイと視線を逸らしたその顔を、バッツは心配気に覗き込んだ。

(捉えるのが、難しい…?)

「…」

(捉えておく、だと…?)

途中で何かに気が付いて、スコールはハッとした。

(風、を…捉えようなんて、なんて…、なんて傲慢なんだろうか…)

「スコール?」

ハッと顔を上げると、困惑した様子でバッツが此方を見ている。
ゆっくり手を伸ばしてきて、髪に触れようとした。その手を、スコールはぎゅっと掴む。

「…スコ…」


(…それでも、俺はこの手を放したくないと思うんだ)

この手を、
彼、を

「アンタが…」

握り締めていたバッツの手を己の方に引き寄せると、スコールはその身体を抱きしめた。


(アンタが欲しい)








end

追記:タイトルは遠回しで、しかもちょっとかっこつけてます。すみません。

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