確かに昔から怖いもの知らずなところがあって、おれも困らされたもんだ。
どうやって、この船まで辿り着いたのか知らないけど、女一人で海を渡るなんて度胸があるというか、危機感がないというか…
「って、おまえ!親父とお袋はどうした?まさか黙って出てきたんじゃないだろうな!?」
「そんなことないよ!ちゃんと“お兄ちゃんのところに行ってきまーす!”って言ったら、“行ってらっしゃ〜い”って言ってたよ!」
「は!?」
ちょっと待て!
ここは前半とは言えグランドラインの真っただ中だ。
そんな危険な場所に行くことを、どうして簡単に許したんだ!?
そもそも、おれは海賊になるって家を出たんだぞ?
それを、「ちょっと隣町に行ってきます」レベルで送り出すなよ!
「そういえば、お前が家を出る時もそんな感じだったな」
おれが海賊になるって言った時の両親を思い出して、何故か涙が滲んだ。
なんだよ!ペンギンの慰めなんていらねーよ!
船長の後ろで自分は関係ないみたいな素振りしてるくせに!
「なんだ。お前も知ってるのか、ペンギン」
「いえ、全然知りません」
「この裏切りものー!!」
さっきまで熱い抱擁を交わしていたくせに!楽しそうに帽子の取り合いしてたくせに!
てゆーか、二人はいつ知り合ったんだよ!
「ともかく、てめぇらの兄妹漫才に付き合ってる暇はねぇ」
「スンマセン!なんとしても家に帰しますから!」
イライラしだした船長に、おれはすくみ上がっているというのに、名前はどこ吹く風で、その上…
「きゃー!くまさんだぁ!」
「熊でスミマセン…」
「可愛いー!!」
「バカ!名前!」
船長そっちのけでベポに抱き着いた名前は、おれの声なんて聞こえていないようで、ひたすら黄色い声を上げている。
船長はこういう、喧しくて人の話を聞かないやつが大嫌いだった。
馴れ馴れしい口を利くだけでは飽き足らず、ついに無視するという暴挙に、おれは慌てて名前を引っぺがそうとしたが時すでに遅し。
「どうやら、おれを怒らせたいらしいな…ROOM…」
その言葉を合図に展開された空間で、おれと名前は見るも無残な姿になった。
「なんでおれまでー!?」
「連帯責任だ」
手、足、首、だけでは済まされず、膝も肘も胴体も、もはや細切れと言っていいほどバラバラにされてしまった。
何度かバラされたことのあるおれは、悲しいことにどこか慣れてしまっているが、知らない人ならパニックになるところだ。
「きゃー!すごーい!動くよー!切れたのに動くよー!あ、くっ付いたー!見てみてーお兄ちゃん!面白いよー!」
そう、パニックに…
「てめぇ…」
何故か狂喜乱舞している名前に、おれはバラバラになった体でのた打ち回るしかなかった。
「ここは子供の遊び場じゃねぇぞ…」
「名前ー!ヤメテー!お兄ちゃん死んじゃうからー!」
「そんなに遊びてぇなら、おれが遊んでやるよ」
そう言って船長は再び刀を構えた。
その唾の音が、天からの迎えに聞こえた気がして、おれは思わず手を合わせた。
「これ以上、余計なこと言わないで〜」
「遊びに来たんじゃないよ」
「あぁ?じゃあ、なんだ」
しかし、おれの祈りも空しく、今にも振り下ろされそうな刃を目の前に、何故か名前は自信満々に言い放った。
「わたしも仲間に入れてください!」
その言葉に、一同が困惑したのは言うまでもない。
妹よ…お兄ちゃんがここで命を落としてもいいのか…
2014/12/10
たぶん、この夢主は変態ですね(笑)
ペンギンが途中から空気になってしまったorz
ペンギンが途中から空気になってしまったorz