「〜〜〜っ!!」
うっかり悲鳴を上げそうになったけど、なんとか両手で塞いだ。
今日、救急車来たわねー、お隣の山田さんが倒れたらしいわよー入院したってー、あらぁもう年だものねー、なんて会話だけじゃ済まされないほどの大事件になってしまった!
いや、もしかしたらドラマの撮影中かもしれない!
それはそれで大事件だ!!
「って、人ンちでそんな撮影するか!」
本日、二回目のひとりノリツッコミをしていると、ヤクザ(仮)が呻き声を上げた。
「ぅ…」
「ひっ!!」
普段ノロマで呑気な私でも、流石にこの時ばかりは光の速さで家の中に駆け込んだ。
張り裂けそうな心臓を抑えながら、なんとか震える手で携帯を取り出した。
「けけけ警察…!えーっと、ひゃくじゅうきゅう…あれ?違う!ひゃく…えー」
人って切羽詰まると頭が真っ白になるんですね。
パニックになった私は結局、履歴の一番上に電話を掛けてしまった。
『もしもし?名前?どうしたの?』
「も、もしもし!パトカー1台お願いします!サイズはMで!」
『はぁ?何言ってんの?』
「あああああ!間違えたっ!助けて!ユキちゃぁん!!」
昨日の夜、「明日は1時集合ね」と言っていたユキちゃんが、ものすごく冷めた声でため息をついた。
テンパった私を、ドン引きしないで付き合ってくれる数少ないお友達です。
『何?遅刻すんの?寝坊?』
「そうじゃなくて…!」
何も言っていないのに遅刻認定するとは、ユキちゃんの私に対する扱いはいつも酷すぎる。
いや、よく遅刻する私が悪いのか。
『じゃあ、何よ』
「オー○ンド・ブル○ムと哀○翔を足して2で割ったみたいな人がいるの!」
『どんなだよ』
何故だ、何故伝わらないんだ!
結構、的確な例えだと思ったのに!
『もう、なんなのー?』
「だからー!」
「おい…」
なんとかこの状況を説明しようと奮闘していると突然、背中に掻いていた汗がスーッと引いていった。
先ほどまで喧しいほどに鳴り響いていた心臓も、まるで止まったように静まり返った。
息も出来ず、カラカラになった喉でムリヤリ唾を飲み込んでから振り返ると、そこには…
「おい、てめぇ…」
「ぎゃあぁぁー!!!」
いつの間にか背後に立っていたオーランド翔さんは、ドスのきいた低音ボイスで私を睨んでいた。
乙女らしからぬ悲鳴を上げた私は、玄関の床に激しくお尻を打ちつけた。
「ひぃいいー!命だけはお助けをー!!」
その手には、あの黒く長い刀と思わしきものが握られていて、私は情けなくも命乞いをするしかなかったのである。
『ちょっと、名前ー?どうしたのー?』
いつの間にか落としてしまった携帯から響くユキちゃんの声を聞きながら、私は悟りの境地を開いてしまいました。
お父さん、お母さん…
今まで、平凡な家庭に生まれて、平凡に育った平凡な私も、どうやらここまでのようです。
さよなら、平穏…
2014/10/27
ほとんど絡んでいないのに、これを夢と言うのかどうか…
あんまり俳優さんとか詳しくないので、もっとピッタリな方がいたら教えてください←
あんまり俳優さんとか詳しくないので、もっとピッタリな方がいたら教えてください←