サプライズはこれから [1/2]
サンタさんへ
去年は沢山のプレゼントを
ありがとうございます。
いっぱい貰ったので
今年は他の人にあげてください。
リル
サンジは、その手紙を見て思わず膝をついた。
「つまり、何も要らないってこと?」
「たぶん…」
「まぁ、あの子らしいわね」
確かに、物欲のない彼女らしいといえるだろう。
そんなリルがチョッパーと楽しそうにサンタ宛の手紙を書いているのを見て、これはチャーンス!と思った矢先の出来事だった。
「いい機会だし、ホントのこと教えてあげれば?」
「ダメだ!ナミさん!リルちゃんは純粋なんだ!まだ信じてるんだ!夢を壊すなんてできねぇ!!それに、あんな可愛く“サンタさんにお手紙書いたの”なんて言われたら…!」
「はいはい、ノロケはいいから」
興奮し始めたサンジとは裏腹に、ナミは冷めた目で手紙をベッドに放った。
「ともかく、手紙の隠し場所は教えてあげたんだから、あとは自分でどうにかしなさいよ」
そんな素っ気ない態度に、相変わらずだなぁと見惚れていたサンジだったが、内心藁にもすがる思いだった。
「でも、ナミさん…もう時間がねぇのに…」
「手紙、戻しておいてね」
今日までどうにかリルの欲しいものを聞き出そうとして、ことごとく失敗に終わったサンジにとって、これが最後の手段だったのだ。
そんな最終兵器のナミは、まるで見捨てるかのように立ち上がった。
盗み見などという一番最低な方法をとったのにも関わらず、答えが見付からないなんて…
(おれは一体どうしたら…)
サンジが項垂れていると、不憫にでも思ったのだろうか、深いため息が聞こえた。
顔を上げると、ナミが妖艶な笑みで囁いた。
「ここは“サンタさん”の腕の見せ所でしょ?」
その挑発的な視線に、サンジは既にあの真っ赤な衣装を購入していたことを思い出した。
(そうだ、ここは男の真髄が問われるところだ)
意気込むサンジの懐から、ナミは目にも止まらぬ速さで一枚の紙切れを奪い取った。
「じゃ、まいどあり〜」
そう言って部屋を出たナミの危険なヴァレリーには、一人のガイコツユキチが吸い込まれていった。
これ以上“ナミさんチャンス(有料)”を使用すると、プレゼント代がなくなってしまいそうだ。
痛い出費に頭を悩ませながらも、サンジはずっと気になっていた単語を思い浮かべた。
「去年、か…」
可愛らしいピンクの便箋を枕の下に戻してから、サンジは女子部屋を出た。
“去年?”
「そう、サンタに何貰ったんだい?」
手紙を盗み見たことがバレないように自然に、それとなく聞いたつもりだったのに、何故かリルは俯いてしまった。
内心、後ろめたいサンジは余計なことは言うまい、とリルの言葉を待ったが、彼女は窺うようにこちらを見上げた。
その上目遣いに身悶えていると、リルは何故か頬を桃色に染めながら人差し指を立てた。
“ナイショ!”
そう音もなく言い捨ててから、リルはパタパタと音を立てて去った。
(おいおい、サンタ…それセクハラじゃねぇの?)
リルが赤くなるような恥ずかしいプレゼントを贈った去年のサンタ役に、見当違いな恨みをぶつけながらサンジは街へ繰り出した。
「それじゃ、色々とありがとう」
「いえいえ、頑張ってくださぁい!」
やけに甲高い声で背中を押す店員に、手を振って別れを告げた。
あれから悩みに悩んだ結果、なんとか手持ちの金でリルへのプレゼントを手に入れることに成功した。
ついでに、ワザと買い忘れておいたケーキの材料も。