Rachel

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おやすみ、おっぱいマクラ [1/3]


そこは殺伐とした雰囲気だった。

一行が滞在しているのは観光業が盛んな夏島で、治安もよく明るい街だった。
ビーチで遊んだり、買い物をしたり、各々楽しく過ごしていた筈だった。
それなのに…

「ったく、手間かけさせやがって」
「んだと!?元はと言えばてめぇが…!!」
「だからー!やめろって!!」

サンジがゾロに掴みかかっているのなんて日常茶飯事なのに、それを必死に止めるウソップがいる。
その緊迫した雰囲気に誰もが息を呑んだ。

「ともかく、みんな落ち着いて、一旦状況を整理しましょう」

ナミの呼びかけに、サンジはなんとか苛立ちを抑え、ようやく全員が腰を下ろした。

「街の方は居なかったのよね、ルフィ」
「おぉ!家ん中まで見たけど居なかったぞ!」
「それで、おれがどれだけ謝って回ったと思ってんだよ…」

ルフィの尻拭いをさせられたらしいウソップは、ゲッソリと項垂れた。

「港の方は?」
「一つひとつ回ったけれど、残念ながら…」
「やっぱり、おれが一緒に戻ればよかった…」
「船医さんのせいじゃないわよ」

こちらもションボリと項垂れてしまったチョッパーを、ロビンが慰めていた。

「それで、海岸の方は?」
「……」
「サンジくん?」
「え?あ、あぁ…」

状況を報告し合って、今後の作戦も立てなくてはならないというのに、サンジは心ここにあらずといった感じだ。
もちろん、その表情を見れば、呆けている理由も結果も明白だった。

「その様子じゃあ、収穫はなかったようね」
「……」
「まったく…海の方は朝になってからって言ったのに、潜ったわね」
「っ…」

呆れ顔のナミに返す言葉もなく、サンジは滴る雫を払った。

「ともかく、日が出たら船を出すわよ」
「置いてくのか!?」
「違うわよ、沖を探すの」
「そうだな、状況から見て海に入ったことは間違いなさそうだし」

ウソップがそう言うと、全員が納得したようで、各自出港準備を始めた。

そもそも事の始まりは、なんだったのか。
昨日はいつも通り買い出しを済ませて、リルへの土産を買ってから船へと戻った。
甲板では相変わらずゾロが居眠りをしていて、呆れながらもサンジは食材を運び入れた。
そこへ、皆でビーチへ遊びに行ったはずのチョッパーが一人で帰ってきたことで事件が発覚した。

「先に船に戻るって一人で帰ったんだ」
「一人で?」
「おれも一緒に帰るって言ったんだけど…」

一人で帰したことを咎められたと思ったのか、チョッパーは申し訳なさそうに項垂れた。

この島はそれほど治安の悪い島ではないから、一人で出歩いても何ら問題はないだろうけど、万が一という事もある。
それは彼女の特殊な能力や人種によるものもあるが、サンジとしてはあの可愛さなら攫われてもおかしくはないと思っていた。

(おれみたいに、な…)

この時はまだ深刻な事態に陥っているなんて思いもよらなくて、サンジは呑気にリルへの土産をポケットに忍ばせていた。
次いで帰ってきたロビンが甲板を指差すまでは…

「でも一度戻っては、いるようね」
「え?なんで?」
「ほら、あそこにボードが…」

その方向には、呑気に寝こけているゾロとリルがいつも持っている探検ボード、それと包帯が散らばっていた。
それは、まるで三流ミステリー小説のような光景で、どこか胸騒ぎを覚えたサンジは思わずゾロを叩き起こしていた。

「おい!起きろ、マリモ!」
「あぁ?んだよ…」
「リルちゃんはどこ行ったんだ?」
「は?知らなねぇよ、まだ戻ってきてないんだろ」
「んな訳あるか!ボードがここにあんだぞっ?」
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