Rachel

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「おいしいかい?」

大きく頷くと、サンジがリルの頭をクシャっと撫でた。
親兄弟くらいにしか撫でられたことのない頭を、大きな手の感触で包まれて、リルは思わず肩をすくめた。
それと同時に何故か心臓が跳ねて、リルは誤魔化すようにフルーツを口に詰め込んだ。

(な、なに…?)

サンジは嬉しそうにリルを見つめていて、どうしようかと困っていると、

「あら、美味しそうね」
「んナ〜ミすわ〜ん!お疲れ様でーす!もちろんナミさんにも!」

部屋から出てきたオレンジ色の髪の女性に、サンジは一体どこに持っていたのか、フルーツの盛り合わせを差し出した。
しかも何故かサンジは目からハートが飛び出している。
明らかに自分への対応との違いに、リルは呆気に取られていた。

(なんで…?)

いつも相手によって態度が違うからよく分からない、とリルはクネクネとキッチンへ向かうサンジを見つめた。

「どう?」
「?」
「足、チョッパーに診てもらったんでしょ?」

先ほど“海図を書くから邪魔すんじゃないわよ”と、この世のものとは思えないほど恐ろしい顔で言っていたナミが、自分のことを心配してくれたのかと嬉しくなって、リルは足をブラブラと揺らして大丈夫だとアピールして見せた。
しかし、

「そう」

それだけ言って、ナミは素っ気なくキッチンへ行ってしまった。

ナミはこの船の航海士で、リルが船に乗ることを最後まで反対していた。
リルは、ものすごく怒っていると思っていたが、数日経つとどうやらそうでもないらしい。
サイズは全然合っていないけど服を貸してくれたり、ベッドは譲らなかったけど寝るところを用意してくれたり、なんだかんだ言って心配してくれたり。

(ホントは優しいんだろうなぁ)

リルが勝手にそう思っていると、今度は不思議な形の鼻の人がやってきた。

「見ろ!リル!」
「?」
「これがウソップ様が発明した、その名も“特製探検ボード”だ!!」

そう言ってウソップは、ノートより少し小さくて薄い板のようなものをリルの前に突き出した。

(たんけん?)
「見ろ!ココを押すだなぁ…」

ウソップが板の横にあるボタンを押すと、そこからペンが飛び出してきた。
そして板についた紐を首にかけて、フタを開けると中には紙があり、そこへスラスラとイラストを書いた。

「どうだ!これなら筆談するときに便利だろ!」

他にも色々な機能がついている、と嬉しそうに説明するウソップに、リルはパチパチと拍手をした。

ウソップは狙撃手なのに、いつも何か面白いものを作っている。
食べ物じゃないけれど、サンジ同様にとても器用だ。

(ところで、なんでこんなに色々作ってくれるんだろ?)

最初はリルと同じくらい萎縮して怖気づいていたウソップが、いつからか得意げに発明品の説明をするようになった。
リルのドンくさい行動に、実はウソップが胸を撫で下ろしていたことをリルは知らない。

「あら、素敵ね」

その探検ボードを眺めていると、また頭上から声が降ってきた。
見上げると黒い髪の女性が船首楼から顔を覗かせている。

「だろう?オレ様の手に掛れば、これくらいお手の物だぜ!それに、このボードには…」

延々と説明と自慢を始めたウソップを置いて、リルは船首楼へ上がった。
少し足が痛んだが、ゆっくりならなんとか歩ける。
ビーチチェアに座ったロビンは、難しそうな分厚い本を置いてニッコリと微笑んだ。

「バッグみたいね」

探検ボードを見せると、リルの肘から更にもう一本腕が伸びてきた。
リルの意思とは関係なく動くその不思議な腕は、ボードの紐をリルの肩に掛けた。
ボードの裏には花の模様が彫ってあり、一見すると可愛らしいショルダーバッグのようだった。

ロビンは考古学者で色んなことを知っていた。
しかも色んなところから腕を咲かせてりして、足の不自由なリルを助けてくれる。
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