Rachel

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ただのラブレターだ [2/3]


「それで?ここから、どうするんだ?」
「あとはエースにでも送らせるよい」
「そうか、確か責任取るとか言って張り切ってたからな」

イゾウは少女について特に何も言わなかったが、昨夜廊下でエースと何やら言い合っているのが白ひげには聞こえていた。
もちろん、白ひげは夜更かしをしていたわけでも、聞き耳を立てていたわけでもない。

「おめぇら、人の部屋の前でケンカすんなよ」
「!」

白ひげがニヤリと笑うと、イゾウはすぐに昨夜のことだと理解したらしく、珍しくバツの悪い顔をした。

(用心深いのは悪いことじゃねぇんだがな)

イゾウがこの船や白ひげのことを思って厳しい目で見ているのは知っていたが、毎度憎まれ役では神経がささくれだつだろうに。
起こして悪かった、と申し訳なさそうなイゾウに、白ひげは微笑みをひとつ返した。

「あー、食った食ったー!」

そして、最後に甲板に現れたエースは、呑気に腹を叩いていた。
マルコが先ほどと同じ説明をエースにもすると、何やら意気込んでいるようだ。

「よし!じゃあ、あとはおれがストライカーで送るぜ!」

そう言うと、エースは部下が準備しているストライカーの様子を見に行った。

「なぁーんで、アイツはいつも美味しいトコばっか持ってくのかねぇ〜」
「それが末っ子の特権というやつさ」

この船の中では若い方のエースは、もちろん隊長の中でも一番年下で、弟のように可愛がられている。
しかし、弟がいるというエースは本来、面倒見のいい性格なのだろう。
あの小さな少女を放っておけず、あれやこれやと構いたいのだ。

(まぁ、それはエースだけじゃねぇようだがな)

少女の見送りだろうか、はたまた一目でも見ようという野次馬だろうか、甲板には続々とクルーたちが集まってきた。
その騒がしさと共に、件の少女がクリスティーナとエミリーに連れられて甲板へと姿を現した。
自然と視線はそこへと集まり、少し後ずさった少女はクリスティーナの陰に隠れてしまった。
少女は恐る恐る顔を覗かせてキョロキョロと辺りを見回したあとに、白ひげの存在に気付いたようだ。
探すまでもなく甲板の中央に鎮座していた白ひげに少女は一瞬たじろいだが、ナース二人に付き添われるようにして目の前までやってきた。

「グララ、来たか」

白ひげがそう言うと、少女はペコリと頭を下げた。
そして、モジモジとしながらチラリと白ひげを見上げた。

「なんだ?」
「渡したいものがあるそうですよ」

クリスティーナが助け舟を出すと、少女はおずおずと手の中の物を差し出してきた。
どうやら手紙のようで、白ひげの手には少し小さかったが指で摘まんで受け取った。
体格差を考えていなかったのだろう、手紙を開きにくそうにしている白ひげを見て、少女は慌てた様子だった。

なんとか自力で開いた手紙は文字も小さく少し読み辛かったが、読み終わる頃には笑いが止まらなくなっていた。

「グラララララ!」
「っ!」
「オヤジ?」

隣にいたマルコが不思議そうな顔をしたが、すぐに察したらしくフッと穏やかな空気が流れた。
そこには沢山の感謝の気持ちが綴ってあった。

船に置いてくれたこと、手当てをしてくれたこと、温かいご飯と寝床を与えてくれたこと。
それから、目の前で気を失ってしまったことへの謝罪と、ほんの少しの弁明。
決して恐かったからではなく、初めて見る巨体に驚いただけだと。
その文だけ、文字が微かに歪んでいたのは見なかったことにしよう。
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