Rachel

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あれが噂の天然タラシ [3/3]


「腹減った〜!」
「あれ?エース隊長」
「なんだ、まだ食べてなかったのか」

イゾウとエミリーが揃って時計を見上げた。
確かに、この時間にエースが食堂へやってくるなんて違和感を覚えるだろう。

「いやー、マルコに部屋に閉じ込められてさ」
「どうせ、また書類を溜めてたんだろ〜?」
「でも外からつっかえ棒することなくねぇ?」
「え?ホントに閉じ込められてたんですかぁ?」
「もうお陰で肩バキバキだよ」
「自業自得だろう」
「サッチ、おれのは?」
「はいはい、残してありますよっと」

慣れないデスクワークに肩をグルグルと回していたエースは、サッチが席を立つのと同時にリルの横へ腰を下ろした。
今日はビーフシチューか、と呟いたエースは隣りのトレイを物欲しそうに見つめている。
リルは、突然親しげに隣りに座った割にはビーフシチューから目を離さないエースに戸惑っているようだった。

「おっ!お前!気が付いたのか!」
「っ!」
「もう大丈夫なのか?」

しばらくしてから、やっとその存在に気付いたらしいエースは、嬉しそうにリルの顔を覗き込んだ。
毒気のない笑顔に至近距離で迫られて、困ったように俯いたリルを見て、イゾウはため息をついた。

「こらこら、まったくお前は…」
「ん?なんだよ」
「近すぎですよぅ」
「そうか?」
「ほれ、さっさと食えよ」
「お〜!いただきます!」

サッチがエース用に残しておいた特大トレイを差し出すと、手の平を返したように食事に飛びついた。
そのお陰で、やっとその視線から解放されたリルはホッと息をついた。
10人前のビーフシチューにがっつくエースに驚いていたようだが、少ししてからリルもやっと食事を再開した。

(やっぱ、コイツは色気より食い気か)

そう微笑ましく見守っていたら、エースが思いついたように顔を上げた。

「そうだ!おれがちゃんと責任とってやるから安心しろよ」
「え?」

エースの言葉にサッチたちはギョッとした。
サッチの中では、“責任”と言ったら“傷ものにした責任”しか思い浮かばなかったからだ。
一体、いつ二人は責任を取るような間柄になったというのだ。
言われたリルも驚いて目を丸くして、口を魚のようにパクパクとさせている。

「ちょっとエースくん、お兄さんそんな子に育てた覚えはないわよ?」
「はぁ?なに言ってんだ?」

それなのに純粋に不思議そうな顔をするものだから、まるで邪推をしている自分が穢れているような気がして、サッチは思わずたじろいだ。

「いや、だって“責任”って…」
「あぁ、おれが釣っちまったからなぁ、ちゃんと家まで送ってやるよ!って」
「あ、そういうこと…」

エースは口元に米粒を付けながらニッコリと笑った。

先ほどの反応を見る限り、リルもサッチたちと同じ勘違いをしたのだろう。
エースの屈託のない笑顔を見たリルは、恥ずかしそうに顔を背けた。

「っ…」
「どうした?顔赤いぞ?熱あんのか?」

俯いたリルの顔を無理やり覗き込もうとするエースを尻目に、エミリーがこっそりとサッチの横に移動してきた。

「サッチ隊長、イゾウ隊長…」
「なんだい、エミリーちゃん」
「もしかして、あれが噂の…」
「あぁ、そうだ…」


あれが噂の天然タラシ


(わたし初めて見ました!さ、流石エース隊長…!)
(フッ、天然の力とは恐ろしいな…)
(ガシャーン!)
(あ、寝た)
(あれで、よく息できるなぁ)
(リルちゃんパニックになってますけど…)


2013/04/26

サッチさんは軽い、イゾウさんは上品な、エースは天然な、マルコは真面目?な、タラシだと思います。
結局みんなタラシ(笑)
続く気がする。
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