Rachel

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セクハラって知ってます? [2/3]


(オヤジを泣かすなんて…恐ろしい女だよい)

それから医務室へ少女を運ぶと、釣り上げてしまった責任を感じているのか、エースが心配そうにその顔を見つめていた。
しかし、このトンチンカンな末っ子に任せられないので、未提出の書類と共に部屋へ押し込んだ。

「おっ、マルコ!どうよ?人魚ちゃんは」
「サッチ、もう夕飯の時間だろい」

再び医務室に戻り、ドアノブに手を掛けたところでサッチがやってきた。
今頃、食堂は腹を空かせた野郎どもでごった返しているはずなのに、何をウロついているのだ。
マルコが怪訝な顔をすると、サッチはヘラヘラと笑った。

「大丈夫!アイツらは出来るやつらだ!」
「……部下に押し付けてきたのかい」
「違うって!任せてきたの!」

流石に全部押し付けてきたとはマルコも思っていないが、調子のいいこの男には呆れてしまう。

「こんな隊長で、4番隊が不憫でならないねい」
「まぁまぁ、ほら入って入って!」

どうやら少女を見物しにきたらしいサッチは、マルコの後ろから無理やり医務室へ入り込んできた。

「お!起きてんじゃん!」

サッチが声を上げると、ベッドの上の小さな肩が震えた。
上体を起こしただけの少女は、どうやら目を覚ましたばかりらしく、突然近付いて行ったサッチに目を丸くしている。
マルコが視線を向けると、聴診器を外した船医が頷いた。

「もう、いいかい?」
「あぁ、問題なしだ」

後は頼むよ、と奥の部屋へ消えていった船医を見て、マルコはベッドの横に椅子をつけた。

「それで、お前さん名前は?」
「…っ」

しかし怯えているのか、少女は目を泳がせて一言も発しない。
しかも掛けてあった布団を手繰り寄せて、小さく縮こまってしまった。

「マルコー、そんな恐い顔じゃビビるって!」
「うるせぇよい」

少し前に甲板でエースに同じようなことを言われたマルコは、思わず口をへの字に曲げた。
自分の顔が女子供向けではないことは自覚しているが、こう何度も言われると腹が立つ。

「ここはサッチさんに任せなさいって!」

どこか自信満々で割り入ってきたサッチは、ベッドに肘を乗せて少女と視線を合わせる。
確かに見た目はアレだけど人当たりだけはいいからな、とマルコは一応押し黙ることにした。

「お嬢ちゃん、名前は?あ、ちなみにおれはサッチ、この船でコックしてんだ」

だが、やはり少女は何も答えない。
それどころか、熱心に話しかけるサッチをよそに、チラチラと毛布の中に視線を落として忙しない様子が、マルコのイライラを加速させる。
更にサッチが、いくつ?可愛いね?そうだ、お兄さんのご飯たべるー?とか、どんどん話がズレていくので、流石のマルコも痺れを切らした。

「なんで、こんなとこに居たんだよい」
「大丈夫、誰も君に危害を加えたりしないから!」
「一体どこから来たんだい」
「心配しなくても、魚人島でも、どこでも、ちゃーんと送ってあげるよ!」

何も答えない少女に、ウィンクをしたサッチに、マルコは舌打ちをした。

そんな、どうにも一方通行な状況に、控えていたナースの一人が口を開いた。

「お二人とも止めてください、怯えてるじゃないですか」
「え?おれも!?そりゃないよ〜クリスティーナさ〜ん!」

金の長い髪を揺らしたナースは古株で、ナースたちを纏めているほどの腕だ。
その優しい笑顔から、下っ端たちの間では聖母さまと崇められている。

そんなクリスティーナが庇うように少女の側へ寄ると、今度は反対側から別のナースが立ち塞がった。
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