Rachel

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気に入らなねぇな…

その脅えた瞳も、言いたげな唇も、不自然な視線も、震える肩も、隠すように握る手も、引き摺る足も
ぜんぶ、全部…

何もかも気に入らねぇ


* distrust *


ふと意識が浮上すると、いつものような騒がしい声が遠くに聞こえた。
そう、いつもだったらルフィとウソップとチョッパーがバカ騒ぎしている声が聞こえて、それからナミかサンジ辺りに一喝されて、ロビンがクスクス笑ってる。
そんな声を目覚まし代わりにしていたのに、今日はどこか遠い。

いつもと違う様子にゾロは不思議に思って目を開けた。
見渡せば、そこにはガランとした甲板だけがあった。

みんな出かけたのか、と納得したが、どこか違和感を覚える。
誰もいないのに、いつもの声が微かに響いているからだ。
大きく伸びをしてから、ゾロはようやく立ち上がった。

謎の声を辿って船の周りを見渡すと、岬の先に広がるビーチがあった。
そこには沢山の人々が集まっていて、砂浜に寝転んだり、泳いだり、とそれぞれ楽しんでいるようだった。
その中に見慣れたクルーたちの姿があることに、ゾロはすぐに気が付いた。

チョッパーとロビンは浜辺にいて、ナミたちは水辺ではしゃいでいるようだ。
その中に、いつも中心にいて一番騒がしい船長が見当たらなかったが、どうせまた一人で冒険に突っ走ったのだろうと、何故かすぐに納得できた。

どうやら、この島は比較的平穏なようだ。
自分もビーチへ向かおう。

そう思い、ゾロが中央甲板へ降りると、そこにはリルがいた。
リルは手摺に腕を乗せて、みんながいるビーチを眺めていて、時折嬉しそうに手を振っている。
ビーチには、同じく大きく手を振るサンジがいて、そのだらしない顔にゾロは思わずため息をついてしまった。
その音でやっと気付いたのか、リルが驚いたように振り返った。

「お前は行かなねぇのか?」
「……」

ビーチを顎でしゃくって見せると、リルは怯えたように視線をさ迷わせた。

リルはいつもそうだ。
警戒しているのか、それともゾロが不審に思っていることに気付いているのか。
どこか距離を取って近付こうとはしない。
そのくせ何故か意味深に視線を送ってくる。
睨み付けると、まるで小動物のように逃げていく。

素性も知れず怪しい、というのもあるが、なによりその態度が気に入らなかった。
しかも声も出せなければ、足も悪く、正直足手まといにしか見えなかった。

(いや、でも…)

なるべく痛まないように、とゆっくり後ずさるリルを見て、ゾロは鼻で笑った。

「まさか泳げねぇ、なんて事はねぇよなぁ?」
「っ……」

その言葉にリルは弾かれたように顔を上げた。
しかしゾロの強い視線に怯んで、また俯いた。

人の強さは見た目では判断できない。
足手まといにしか見えなくても、驚きの能力を隠し持っている可能性もある。
特にこの偉大なる航路では、それを嫌というほど見てきた。
心の中では何を思っているかなんて、数日一緒にいたくらいじゃわからない。
悪魔の実というものは、それほど恐ろしいものなのだ。

「泳げなくたって浜辺くらい行けるだろ?」
「……っ」

そうだ、万が一悪魔の実の能力者でも、本当にただのカナヅチでも、チョッパーやロビンのように浜辺で遊んでいればいいのだ。
ましてや、乗船してから他のクルーたちの庇護欲を掻き立てるリルを皆が見過ごすハズもない。
特にサンジがリルを一人船に置いていくなんて、どう考えてもおかしい。
何か海に近付けない理由でもあるのかと、勘繰ってしまう。
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