Rachel

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「これなんて、どうかしら?」
「わー!可愛いー!」

可愛らしいワンピースやシャツを、その小さい体に次から次へ当てていると、リルは目を瞬かせた。
何が珍しいのか、しきりに視線をキョロキョロと泳がせてその場に固まっている。
元々、着ていた服や追われていたことを考えると、こういった店にはあまり来たことがないのかもしれない。

汚れた端切れのような格好を思い出して、ナミはフリルの付いた可愛らしいブラウスをリルの体に合わせた。

「アンタいいわねぇ、こういうの似合って」
「でも残念、サイズが合わなさそうね」
「ちょっとおばさん!もっと小さいのないの?」
「それは、そのサイズしかないよ」
「う〜ん、せっかく色々揃えようと思ったのに、アンタ小さすぎよ」
「……」
「なに?」

“二人が大きすぎるんじゃ…”という言葉は音にはならなかった。

色とりどりの洋服が目まぐるしく入れ替わるさまに、リルは混乱しながらもどこか嬉しそうだった。
その様子にちょっとしたイタズラを思いついたナミは、どんどん試着させてリルに合うサイズの服を次々とウソップに持たせていった。
更に靴やアクセサリーや下着まで買い込んで、山のようになった袋に押しつぶされたウソップが気を失いかけた頃に、ようやく船へ辿り着いた。

「おかえりなさぁ〜い!!」

すでに買い物を終えたらしいサンジが甲板から大きく手を振っている。
その忠犬のような姿に呆れながらも、ナミは甲板に上がった。

「歩き回ってお疲れでしょう。ティータイムの用意をしてあります」
「あら、ありがとう」

サンジがスッと手を差し出し、ナミもそれに慣れたように手を乗せた。
甲板にはテーブルとイスが三脚置いてあり、スコーンの乗ったケーキスタンドとティーセットが用意してあった。

そしてナミに続いて、ロビンに手を引かれたリルが甲板へ上って来た。
不自由な足で歩き回ったせいか、ずいぶんと疲れているようだ。
リルがふら付いたのを見て、サンジが慌てて手を差し出した。

「リルちゃ…」

しかし、その手は不自然に止まった。
中途半端に差し出された手を見て、リルも困っているようだった。
どこか自分はおかしいだろうか?とリルは視線をさ迷わせる。

その格好は先ほど買った、胸下で切り替えしたキャミソールワンピ。
短い裾には二段のフリルがついている。
小さな体に似合う可愛らしいデザインだった。
汚れた端切れや大きすぎるTシャツからは見違えるほどの姿だった。

そんなリルを見つめたまま固まったサンジに、上々の反応だとナミはクスクス笑った。

「サンジ君ってリルにはメロリンしないのね」

嫌味もこもめてリルには聞こえないほどの音量で囁くと、サンジは我に返ったように慌て出した。

「えっ?いやっ、おれは…!」
「ふふっ、確かにそうね」

どんな女性にも優しく紳士に接するサンジが、ハート型の目玉を飛び出させる“メロリン”状態にならないことに、ロビンも笑って頷いた。
いつになく慌てた様子のサンジに、リルは不思議そうに首を傾げていた。
そこへピョコピョコとチョッパーがやってきて、リルを見るやいなや嬉しそうに笑った。

「服買ったのか?似合ってるぞ!リル!」
「はっ!あ、リルちゃんっ、似合ってるよ!可愛いよ!」

チョッパーの言葉でやっと気が付いたのか、サンジは取り繕うようにリルを褒めた。
二人の賛辞に服の裾を恥ずかしそうに引っ張りながら、リルは嬉しそうに笑った。

今まで船に慣れずに緊張していたのか、他人に遠慮していたのか、どうにも硬い表情の多かったリルが、顔を綻ばせる程度ならともかく、こんな風に嬉しそうに笑うことは少ない。

滅多にないその満面の笑顔に、サンジは言葉もなく項垂れた。

「っ!」
「あら、どうしたの?サンジくん」

突然俯いたサンジをリルは不思議そうに見つめていたが、金の髪の隙間から見える頬や耳が真っ赤なのは、背後にいたナミには丸見えだった。

どうやら本人に自覚はなかったようで、ナミは思わずため息をついた。


あー、まったく!
暑苦しいったら、ありゃしないわ!

2012/06/28
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