Rachel

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君が落ちるまで、あと少し [4/4]


“変な実を食べて縮んじゃったの”
「変な実?なんだそれ」
“半日で戻るって”
「これがあのクソコック?」
「なんだよ!だから離せ!」

訝しげにサンジを見つめていたと思ったら、納得したのかゾロは投げ捨てるように手を離した。

「このっ…うわっ!?」

当然、サンジは甲板に放り出されて、勢いよく逆さに落下した。
顔面を強打したサンジをリルが慌てて抱き起こすと、ゾロは上から見下ろしながらニヤリと笑った。

「ま、せいぜい迷惑かけんなよ?“チビナス”」
「なっ!?」

それだけ言うと、もうサンジに興味もないのか、ゾロはさっさとダイニングルームへ消えていった。

「くそぉ…なんなんだアイツ…」

悔しそうに顔を抑えていたサンジだったが、真っ赤になった鼻から血は出ていないようだ。
それでも痛いだろうに、と鼻を優しく撫でると、サンジは驚いたようで慌てて飛び退いた。

「…?」
「う…お、お姉さんも、海賊…なのか?」

警戒した様子のサンジに、リルは安心させようと目線を合わせてニッコリと頷いたが、肯定したことで更に距離を取られてしまった。
このままでは勝手に船を降りてどこかへ行ってしまうかもしれない、とリルは再びペンを手にした。

“誰もサンジをいじめたりしないよ?”
「でも海賊なんだろ?」
“うん、でも大丈夫だよ。だから一緒に遊ぼう?”
「は?遊ぶ?」
“うん、何がいい?お絵かき?それとも絵本読む?”

リルの言葉にサンジは唖然としたような表情で黙りこくってしまった。

(あ、男の子だから、かくれんぼとかの方がいいのかな?)

慌てて書き直そうとすると、突然サンジがリルのペンを取り上げた。

「おれはそんなガキじゃねーぞ!」
「っ!」

そう叫んで、サンジはペンを甲板に叩きつけた。

見た目も中身も子供と呼ばれる年齢ではあるが、だからと言って絵本やお絵かきで喜ぶほど幼くはないのだろう
背伸びをしたい年頃だろうに、子供扱いをしたのは良くなかったと、リルは反省して肩を落とした。

しかし、それ以上にサンジに怒鳴られたという事実にショックを受けていた。
いくら記憶が退行しているとはいえ、サンジに優しくされた覚えしかないリルは、動揺を隠し切れなかった。

それが伝わったのか、サンジも狼狽え始めて、よく分からない言葉を口走り出した。

「な、なんだよっ、そんな…くそっ!分かったよ!絵本でもなんでも読んでやるよ!」
「!」

ちょっと投げやりっぽいけれど、それは紛れもない承諾の言葉だった。
嬉しくなってリルがサンジの手を握ると、鼻だけではなく顔全体を真っ赤にして俯いてしまった。

「?」
「べ、別に…なんでもねーよっ」

ぷいっとそっぽを向いたサンジを不思議に思ったが、リルが立ち上がって手を引くと大人しく後についてきた。
そんな微笑ましい姿を、陰から見守っている集団がいることに、二人は最後まで気付かなかった。


君が落ちるまで、あと少し


(あらあら、赤くなっちゃってぇ)
(サンジにもあんな時期があったんだな〜)
(ふふ、可愛いわね)
(リルがついてるなら心配なさそうだな!)
(ところで、おかわりは?)
(って、おい!ルフィ!おれの分がねぇじゃねぇか!)


2015/05/04

まだツンデレな、9歳くらいというイメージで書きました。
実の名前にセンスがなくてスミマセン…思い付かなかったんです…orz
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