「その手の中に」クロロ

数歩後ろから背中を追って歩く。
「ねえ」
「どうした?」
「ん」
振り向くクロロへ右手の平を見せる。黙ってまた前を歩き出すズボンのポケットから返事の代わりに左手が現れた。「おいで」の合図の左手。小走りで駆けよってそこに右手をすべりこませると一瞬力強く握られて、それからやさしく包み込まれた。
欲しいものは全部ある。その手の中に。
20150815

「ぎゅってしてくれない?」イルミ

「ねえイルミ、ぎゅってして!」
「今忙しいから無理」
「お願い、ちょっとだけ〜」
「無理。何度も言わせるなよ」
「…………………わかった」

彼女はしゅんとうなだれて部屋を出て行く。少し強く言いすぎたかもしれない。

「仕事終わったら、」
「…?」
「いくらでもしてあげる」

とたんにぱっと明るくなる表情。

「イルミ大好き!」

感激して飛びつかれる。なんだもうかわいいな。終わったら本当にいくらでもしてあげよう色々と。
20150812

「疑惑の彼」ヒソカ

「もう別れよう」
「急にどうしたんだい」
「…女といたでしょ昨日の夜」
「……見てたのかい?」
「見てた、その人を舐め回しそうなくらい情熱的なヒソカの視線もね」
「一緒にいるだけでどうしようもなく興奮するんだ」
「さよなら、お幸せに」
「待ってよ話せば分かるんだ」
「何が分かるって?ヒソカのタイプが黒髪ロングってこと?」
「そうじゃないんだ。イルミっていってね彼は」
20150812

「打ち明け話」イルミ

「最近どうしちゃったの、調子悪いの?」
「さっき針がお前の足にささったのは悪かったよほんとに」
「それは別にもういいんだけど」
「だけど、なに」
「仕事中ぼんやりするなんてらしくない」
「かもね」
「このところずっと様子が変だよ」
「ああ」
「何かあった?私でよければ聞くよ」
「大したことじゃないんだけど」
「うん」
「お前のことが好きみたいなんだ」
「………うっそ」
20150805

「丸腰で口説いてよ」蔵馬

「浮世離れしてるんだよ、蔵馬ってさ」
「妖怪だからね」
「ていうより猫かぶってるからだよ」
「狐が猫を?」
と蔵馬は茶化す。
「そう、学校でも家でもいーっつもかっこつけてる。かっこつけが標準装備」
「心当たりはあるけど、にしてもひどい言われ様だなあ」
だって私は自然体で無防備な蔵馬を見てみたいのだ。
「ねえ、今だけでもかっこつけるのやめてみない?」
「なかなか難しいな」
「千年も生きたらできないことなんかなさそうなものだけど」
すると蔵馬は私の手からゆっくりとゲームのコントローラーを奪いながら、意味ありげな視線をよこしてきた。
「難しいさ、惚れた君の前なんだ」
私をのぞき込む困ったような眼。弧を描く口元。王子様という形容詞は彼にこそふさわしい、そう思い知らされる。
あっけにとられてポケッとしていたら、テレビから「Ready Go!」と対戦開始の合図が聞こえてきた。まずい!
あわてて自分のコントローラーを握りしめる。隣の蔵馬を見ると涼しい顔で画面を見つめながらコントローラーを操っている。チクショウやられた。汚いやつめ。
丸腰で口説いてよ
これが俺の本性ですよ、と微笑む彼は計算高いまさに妖狐
20150727

「Q&A」クロロ

「クーロロ!」
「なんだ」
「好き!」
「知ってる」
「クロロは?私のこと好き?」
「言わなくても分かるだろう」
「ブッブー、好きかきらいかでお答えください」
「…………」
「はやくー。ごー、よん、さん、にー」
クロロは黙って私を見すえて、それから思い知らせるようなキスをしてきた。
20150725


「センチメンタル・プレイボーイ」シャル

「あいつ死んだんだってよ」
「え、そうなの」
「4番には新しいの入るってさ」
「ふーん」
「シャル」
「なに」
「泣いてもいいんだぞ」
「ハハ、誰が」
ちょっとトイレ、と席を立つ。フィンは妙に鋭くて無駄にやさしいから厄介だよ。洗面所のドアを閉めてからその場にしゃがみこんだ。やっぱりちょっと泣くかもしれない。
センチメンタル・プレイボーイ
わりと本気で好きだったんだ。
20150725

「中指ではじく」イルミ

額に衝撃。声にならない悲鳴をあげながらのたうちまわった。おそらく彼は真顔で見ている。
「いきなりなにすんの!痛いじゃん」
「男の前で簡単に眼閉じたりするなよ」
「イルミがまつ毛取ってくれるって言ったんじゃない」
「それは取り消す」
「それで通ると思ってんの…」
「とにかく今度俺の前でやったらどうなっても知らないから」
「なにそれ!」
なんで眼つむったくらいで脳みそかち割らそうにならなきゃいけないんだ。ちくしょう言い逃げしやがって。
20150724

「そんな馬鹿な」イルミ

「カルトに浴衣着せてもらったんだって?」
「あ、イルミ。うん今日お祭りだから」
「ー見せて」
「え、はい」

私は柄にもなく照れながらくるりと回ってみせた。

「どうかな」
「……………」

あ、黙っちゃったよ。まあでもそうか。彼が褒めるはずないんだ。私も何を期待したんだか。あー恥ずかしい。「どうかな」とか聞いちゃったさっきの私殺したい。

「………」
「………」

それにしても何この沈黙。ツッコミ待ち?仕方ないな、いっちょボケますか。ふざけ半分にたずねる。

「グッとくるでしょ?」
「うん」

最高にクールなツッコミがくると思ったのにイルミは真顔でうなずいた。そんな馬鹿な。
20150718

「心臓に悪い」イルミ

「あーもう死にたい…」
「俺が殺してあげようか」
「そういう依頼ありなの?」
「うん、暗殺じゃないから安くしとく」
「死に方なら理想があるの」
「どんな?」
「窒息死!」
「じゃあ首でいい?」
「ちがうちがう!まずね、こうしてイルミのにおいで肺をいっぱいにするの」

彼女は俺に抱きついて言う。

「骨が折れるくらいつよく抱きしめてくれる?そしたら私イルミの胸で窒息して死ねる」

至近距離。恍惚とした表情で見上げられて、俺は思わず彼女の両肩をぐいと押し除けた。
20150407

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