3



放課後、1番早く廊下に出たのではないか、と言うぐらいにすぐに教室から出た。

田口が俺を目で追っかけていた気もするが、完全に無視をした。

外へ出たら、また曇り。
俺の心の中を表しているみたいで、また気分が下がる。

特にすることもないな、と思い、近くの店を回りまくることにした。


1度田口と来たショッピング街。
でも今は隣に田口の姿が無くて。

平日だからか、人が少ない。
ゆっくり歩いていた時、


ぽつんっ

頬に滴が落ちた。


( 雨… )

折り畳み傘を入れていたからそれを広げ、また歩く。

そういえば以前来たときも雨だった。


『うわっ雨とか最悪!』

『俺、傘あるよ。一緒に入ろ』

『よかった!さんきゅ。よし、背が低い田口の為に傘をお持ちしましょう!』

『ありがとう!でも背が低いは余計だよ〜』

『あはは!』

『あはっ…』

回想シーンかのように、あの時の記憶が鮮明に蘇ってきた。

楽しかった。
また来ようねと約束した。

「田口―――…」

でも今は隣に田口がいない…


先に進むのが出来なくて、後ろを振り返り家へ帰ることにした。





だんだん雨が強くなり、それに伴い、歩くスピードも早くなる。

ようやく家が着く時だった。
家の前に人影があった。

土砂降りに近いこの状態で、傘を差していない。

近づくにつれて、誰かがわかってきた。

「た、ぐち…?」

家の前に居たのは田口本人だった。
こちらを見たとき少し微笑むが、唇は紫になり、髪や制服はびしょびしょになっていた。

「なにやってんだよ―――…」

とりあえず家へと入れて、風呂に田口を突っ込む。
親は働きにいってて、今はいないようだった。



数分して田口はリビングへ来た。
俺の服を着ているから、だぼついてて、やっぱり可愛い。

田口を連れて部屋に入ったとき、一気に気持ちが向上した。

振り向き田口を思いっきり抱き締めていた。

「いやだ、いや…っ」

「あ、べ…?」

「あんな奴のとこ、いくな…っ、別れたくない…!」

「……っ!」

田口が潰れてしまうのではないかと思うぐらい抱き締めていた。
離したらどこかへ消えてしまいそうで―――…


「安部…昨日はごめんなさい…」

「……」

「清水と議員の買い出し行ってて…まさか、見てたとは思わなくて…」

「…ん」

「俺は、本当に安部が…好き、だから」

「たぐ、ち…」

「だから、別れないで…嫌いにならないで…」

抱き締めたままだから田口の顔は見れないけど、涙声になってきていたからとても辛そうな顔をしていることがわかった。

一旦体を離して、田口を見下ろす。
案の定、田口の目には涙が溜まり、今にも溢れだしそうだった。


「田口、疑ってごめん…」

「ちがっ、おれが…」

「いや、信用してなかった俺が悪い。…田口が清水と話す度にイライラして、むかついてて…」

「……」

「メールも無視したし、嫌なことも言った。ごめん」

「安部…俺もごめんねっ…」

とうとう田口の涙腺は崩壊し、ぽろぽろと涙をこぼした。
やっぱりその姿を見て、田口と一緒にいたい、守りたい、そう思った。

「田口、」

「え…んんっ…」

甘くて深いキス―――…
田口はうっすらと目を開けていたが、だんだんと瞼が閉じられた。
1筋の涙をうまく嘗めとり、目を合わせる。

「仲直りのキス、ね?」

「…うん!」


田口の笑顔は俺のものだ。





それからしばらく部屋で話した。


「嫉妬…?やきもち…?」

田口と清水に対する心のもやもや、苛立ちは『嫉妬』や『やきもち』と教えてもらった。

「なんかいっつも田口に教えてもらってばっかだな…」

「そんなことないよ。俺だって、いっぱい教えてもらったよ」

「たとえば?」


俺が教えたことあったっけ?

そう思っていたら、とびっきりの笑顔で田口は答えてくれた。











「恋愛の楽しさを」と―――…








end





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