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恋とは、好きとは、の続き


付き合って1ヶ月。
それはそれは幸せな日々だった。

最初は緊張して(特に田口が)中々会話になっていなかったけど、日が経つと慣れてきて色んな事を話した。

好きな動物やスポーツ、嫌いな食べ物や教科。
小学生みたいな会話だったかもしれないけど、田口が一生懸命話すその姿が大好きだった。
いっつも笑って、少し背の高い俺を見上げてにかっと笑う―――…俺もつられてしまうぐらい、眩しい笑顔。
とにかく可愛い。



「―――じゃあSHR終わりー。あ、田口―――…」

いつものように、学校が終わり田口と帰ろうとした時、担任が田口を呼び止めた。
こっちから田口の顔は見えないけど、担任が少し眉を下げて苦笑いをしていた。

「じゃあ」と言ったかのように、担任は手を上げて出ていった。
それを見かねて、俺は田口に近づいた。

「田口ー、帰ろう」

田口を見ると、先程の担任のように眉をさげていた。

「ごめん、議員集まるらしくて…」

体育祭が近いから…、と付け足すように話す田口。

しっかりしている田口は担任からの希望もあり、クラスの議員をしている。

「仕方ないよ、じゃあまたね」

集まりなら仕方ない。
頑張ってね、と声をかけ出ていった。

もしかして、体育祭前ずっと、とか言わないよな?

なんて考えながら、久しぶりの1人での下校を終えたのだった。








「安部、昨日ごめん」

昼休み、ご飯を食べている時に田口から謝罪された。

「別に大丈夫だよ?気にしないで」

「うん……でもこれからほとんど放課後、集まりがあって…」

語尾がどんどん消えていく話し方からして本当に申し訳ないと思っているんだろう。

「田口、ありがとう」

「え…?」

「クラスのために頑張ってくれて。体育祭終わったら、帰ろうね」

「!、うん…!」


さっきまで垂れてた眉が弓なりになり、目を細め、にこっと笑う田口に癒され、俺も笑った。

いつも癖でやってしまう、田口の頭を撫でようとした時、


「田口ー、」

ふとドアの方から声が聞こえた。
俺も田口も、振り向くと1人の男子生徒。

「あ、今行く!」

ごめんね、と一言断られ、田口は行ってしまった。

撫でれなくて宙に浮いてしまった手をとりあえず下ろし、田口を目で追いかける。

声は届かなくて何を話しているかわからないけど、仲良さげに話しているのが分かる。
このクラスでは『優等生』という名があるからか、俺ぐらいしか田口と話していないから、他人と話す田口が新鮮だった。

相手は、田口より少し背が高い。
―――田口を見る目が何か気に入らない。

「おい、あれ誰か分かる?」

近くの男子グループに話しかけて、ドアを指差す。

「ああ、隣のクラスの清水だよ。サッカー部のエース、だったかな?」

「かなりモテてるらしいよ」

「知ってる!でも彼女作らねぇんだって〜」

俺が無知だったようで、その清水という奴は好印象な少年らしい。
少し何か嫌な感じだなー、と思うが何が嫌か正直わからない。

田口にだって友達はいる、俺にもまた友達はいる。

でも何かが決定的に違う気がして。

「安部?大丈夫?」

どうやら一人悶々としている間に、田口が帰ってきてたようだ。

「ん、大丈夫」

「そう?あ、何か議員の集まりの資料のことでさ、」

田口の話によると、どうやら同じ議員らしい。
知り合いがいない中、“好印象な”清水が声をかけてくれたとか。

清水がね、と話す田口は楽しそうで、笑顔はこっちに向いているのに何故か違う誰かに向いている気がして。



ちくりと胸が、痛かった。







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