隣にある温もり


休日の朝。
シフトの関係でバイトが休みになった美咲は、碓氷がどうしてもというので彼のマンションへ来ていた。しかし、やることといっても特になかったので最初はパソコンでDVD鑑賞。だが、それも見終わってしまったらいよいよやることがなくなり、今度は碓氷が面白いからと開いたページに美咲は釘付けになった。

「分かると怖い…コピペ?」
「コピー&ペーストの略で、どこかで見つけてきたものを掲示板に貼っていったのが元なんだよ」
楽しそうに再生ボタンを押す碓氷。すると暗い背景にうっすらと画像が浮かび美咲は少し青ざめた。
「い、いかにも怖そうな雰囲気の動画だが、この分かると怖いってのは何だ?」
「そのまんまの意味だよ。一見何の変哲もない話なんだけど、隠れている何かに気付くと一気に怖くなるって話」
すぅっと静かに浮かんできた文字を見ることもせず、美咲は碓氷を睨んだ。
「な…!何でこんな天気のいい休日にそんなものを見なきゃならんのだ!そそそそれよりも碓氷…」
何とかして違うことをやらせようとするも、碓氷はカチリと動画を一時停止させて楽しそうに振り返った。
「あっれー?ミサちゃん怖いの?」
煽るように口角を上げて見つめてくる碓氷に、美咲は静かに答えた。
「誰が、怖いって…?」
「そうこなくっちゃ」
マウスを一つクリックすると、動画が再生され始めた。

数分後、其処には真剣な表情の美咲がいた。というのも、碓氷がこれが一番難しかったからと言って動画を早送りして見せた話の謎がまだ解けなかったからだ。
死んだ母親が残したカレンダーの切れ端に謎が含まれていることは容易に分かるのだが、その解き方がいまいち理解できなかった。何かの規則性を持って並べられたらしいカレンダーの日付を見ながら美咲は考え込む。
その様子を横で楽しげに見ていた碓氷は声をかけた。
「ヒント欲しい?」
「いらん」
「さっきからずっとこの画面しか見てないよ」
「うるさい」
「ミーサーちゃーん」
「あああもう!人が真剣にがんばってるって言うのに!」
美咲が勢いよく振り返ると声で感じていたものとは違って少しいじけたような表情の碓氷がいて、それを見たら言い過ぎてしまったかと反省した。たしかにこの話は怖そうだがサスペンスドラマの1シーンを見ているような感じでホラー映画を見ているような怖さとは違う感じがしていたし、もっとも謎が分かっている以上答えが気になるのは当然で。
気が付けば結構な時間集中していたことに美咲は気付いた。
「すまん、つい…。でも最初はお前が見せてきたんだろ?私が解くまで待ったらどうだ」
美咲は呆れたように笑みを浮かべると隣に座る碓氷の肩に頭を預けた。その視線はまだパソコンを見つめていたが、心なしか頬が赤く見える。碓氷はそんな美咲に優しく微笑むと、ソファの上に置かれた美咲の左手に自分の右手を重ねて、小さく握った。

数分後、答えに気付いて青ざめた美咲をからかってグーで殴られた碓氷がそこにいたとかいなかったとか。
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