わんことこうさぎ
1〜5話
☆まえがき★

パラレル。甘々ほのぼの。

2006年は戌年なので犬にちなんだ話でも書いてみるか〜と思って書きました。

雨竜=兎の理由は、十二支の中で雨竜=滅却師=白のイメージに一番合うのが兎だったから。

子うさぎ雨竜がロリ。

{2006年01月作}

##H1##1話[全72話]##H1##
俺の名前は一護。

ご主人とよく似たオレンジの毛並みが自慢のゴールデンレトリバーだ。

ご主人のお供で、都会のマンションから、この土地に引っ越してきた。

お医者さんになりたてのご主人は、自ら志願して、わざわざ田舎の無医村にやってきたんだ。

ご主人が「俺は、山ほどの人を守りてぇんだ。だから、医者のいない土地に行こうと思う」と恋人に話していたのを聞いたことがある。

恋人はその言葉を聞いて「君らしいよ、黒崎」と笑っていたっけ。

わんこと子うさぎ##H1##2話##H1##
まぁ、ご主人の都合はどうあれ、俺は、森と湖に囲まれた緑豊かなこの場所が一目で気に入ってしまった。


◇◇◇◇◇


うららかな春の昼下がり。

ご主人の恋人が、市販の缶詰にひと手間加えて作ってくれた美味しいご飯を済ませた俺は、食後の昼寝をきめこもうと、庭の陽当たりのいい場所へと移動した。

青々とした芝生が気持ちいい、広々とした庭の向こうには、深い森が広がっている。

う〜ん、と伸びをしてからふと森を見ると、何かが動き回っているのが見えた。

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元を辿れば狩猟犬である俺は、すっかり興味をそそられて、昼寝そっちのけで森へと向かった。

森の中には、都会では見たことのない生き物がいっぱいいて、いつでも好奇心をくすぐるんだ。

軽快な足取りで庭を抜けて、下草の茂る森の入口付近まで来てみると、さっき見かけた何かはもういなくなっていた。

ちょっと拍子抜けだったけど、森の梢が鳴る音や鳥のさえずりに誘われて、興味を引くものはないかと、散策気分で森を歩き回る。

わんこと子うさぎ##H1##4話##H1##
どんどん進んでいくと、小さなリスが見慣れない俺の姿に驚いて、頭上高くに張り出した枝の先をチョロチョロと渡っていった。

「うわっ!?」

それに気をとられていたら、大木の影から目の前にきつねが飛び出してきた。

その口には大きなうさぎが銜えられていて、うさぎの流す血の臭いに興奮した俺は思わず吠えかかった。

するときつねは、つりあがった細い目をすぅっと開いて、威嚇するように睨み付けてきた。

「なんや、オマエ?」

「お前こそ、何してんだよッ!!」

わんこと子うさぎ##H1##5話##H1##
「ナニって食事や。自分の食いぶちは自分でかせぐんが森の掟や。覚えとき」

無知な飼い犬やな、と小馬鹿にしたように鼻を鳴らして、きつねはあっという間に走り去った。

俺に横取りされるとでも思ったらしいけど、別にうさぎが欲しかったわけじゃない。

ただ、血の臭いに本能を刺激されたんだ。

俺だって、自然界が弱肉強食だってことぐらい知っている。

見下したようなきつねの態度は頭にきたけど、俺は森の住人じゃないから気にしない事にして、踵を返しかけた時、俺の足元から小さな声が聞こえてきた。



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