ぼくたちはひかれあう
1〜5話
☆まえがき★
原作ベース。シリアス。
雨竜の誕生日ネタ。
たまには恋愛抜きで原作っぽい雨竜を書きたいと思って、一護との友情を書きました。
尸魂界から帰還後の話。虚圏には行きません(笑)。
{2005年11月作}
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今年の秋は短い―――。
それを堪能するように、学校帰りに立ち寄った公園のベンチに一人腰掛けながら、雨竜は風に吹かれて散りゆく落葉を眺めていた。
夕闇迫る公園は酷く静かで、木枯らしが吹き抜けるこの時期は、夕方を過ぎると人影はまばらになった。
ただ枯葉だけが舞っている。
はらはら、と……次から次へと落ちてくる枯葉が、雨竜の頭や肩にも優しく触れては降り積もっていく。
春から夏にかけて色々とあったせいで、ほとんどゆっくり見ることができなかった季節の移ろいだ。
ぼくたちはひかれあう##H1##2話##H1##
だからだろうか、何だか懐かしくさえ感じられる。
雨竜はふと、何かを思い出したのか、微かな苦笑を浮かべた。
―――結局、尸魂界から帰還した後も、別に以前と何かが変わった訳ではなかった。
町の喧騒も、そこに暮らす人々も、以前のまま変わらぬ日常を送っている。
変わったとすれば―――それは、自分自身の心の在り方だ。
滅却師の能力を失くしてしまったというのに、不思議と焦りや後悔はない。
ただ、あるがままの自分を受け入れようと思うだけだ。
ぼくたちはひかれあう##H1##3話##H1##
滅却師の誇りは、力を失くしてもなお、深く己の胸に刻み込まれている。
けれど、あれほど拘っていた死神に対する憎しみは、今では胸のどこを探しても見当たらなかった。
傍に死神が存在していようが、いまいが、それでもいいとさえ、最近の雨竜は思えるようになっていた。
自棄とか諦めではなくて、憎むだけでは何も生まれないという簡単な現実に、彼は気がついたのだ。
「…………っ」
―――つむじ風だろうか、一瞬だけ強く吹き抜けていったそれに、雨竜は目を開けていられず、反射的にその瞼を閉じる。
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頬を砂埃が軽く打つ。
ひとしきり治まるのを待って、雨竜はまた瞳を開けた。
目の前には、先ほどの風に煽られ散ったのか、黄金色の絨毯が辺り一面に広がっていた。
けれど、それだけではなかった。
黄金色の葉にまじって、風になびくオレンジが、こちらに向かって歩いてくるのが見えた。
見間違えるはずもない、あれは―――
「黒崎一護……」
「―――え?」
小さく呟けば、ふと、こちらへと顔を向ける。
一護の方も、予想外の雨竜の出現に驚いたようだ。
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少しだけ早足になって、彼は雨竜のもとへと近寄ってきた。
「何やってんだァ?こんな寒ィところで…」
「…………別に、何となく。君こそ…なぜ、ここへ?」
「ん―……俺も、何となくだ」
オレンジの髪に降りかかる落葉を摘みながら、少し考えるように、がしがしと頭を掻く。
「すっかり秋だなァ…と思ってよ…」
帰り際、綺麗に色付いた銀杏の木があんまり見事だったから、寄り道してみたんだと、一護は言った。
「久しぶりに、季節をゆっくり鑑賞するだけの心の余裕ができた――とか?」
「……まァ、な」
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