地下救護牢シリーズA続・地下救護牢にて
1〜5話
☆まえがき★
原作。シリアス。
本当は地下@だけで終わりのつもりだったけど、これじゃあまりにも雨竜が独りぼっちで可哀想だから、一護が助けに来るという続きを書きました。
この話は【地下救護牢〇七五番にて】の続きです。
{2004年05月作}
##H1##1話[全12話]##H1##
「ム……何の音だ?」
「オイ、なんか近付いて来てねーか!?」
ドオォォォ―――ン―………
それまで静寂に支配されていた地下の空間に突如として地鳴りが轟き、次の瞬間、鉄格子が周囲の壁もろとも派手な音を立てて崩れ落ちた。
「これ一護、もっと静かにできんのか……」
「俺はコソコソすんのが嫌いなんだよ!!」
「儂が結界を張っておるから良いようなものの、騒々しくしすぎじゃ」
「みんなぁ〜*助けにきたよぉ〜♪」
突然の出来事に呆然と立ち竦む茶渡と岩鷲の目前に、もうもうと立ち込める塵の向こうから、一護と夜一(猫)と織姫が姿を現した。
「みんな、無事かッ!?」
「ム……一護…ι」
敵陣の真っ只中にいる状況とは思えないほど緊迫感のない登場の仕方に、茶渡と岩鷲はポカンとした表情で一護達を迎える事となった。
続・地下救護牢〇七五番にて##H1##2話##H1##
「俺の花火よりハデだぜ、オイ…」
「何だよ、せっかく助けに来てやったのに。チャドも岩鷲も、その反応はねぇだろ!?」
久しぶりに顔を合わせた牢内の3人も、助けに来た一護も、お互いに満身創痍だった。
全身に巻かれた包帯が、ここに辿り着くまでに、どれほどの死線を潜り抜けて来たのかを物語る。
――――よく頑張ったよな、俺達……。
その無事を確かめるように一渡り牢内を見回して、一護は不適に笑った。
「待たせたな!!」
「ム…一護、無事だったんだな」
「おう!!何とか自分の足で立ってるぜ、チャド」
「生きてやがったか、この死神ィ!!」
「プッ、岩鷲……お前、ミイラみてぇだぞ」
「ンだとォ!?このクソ神がァァ!!」
顔中、包帯でグルグル巻きにされた岩鷲が、その口調とは裏腹にニヤニヤしながら一護に詰め寄ると、
「ミイラって、脳みそ吸い取っちゃうんだよね*」
と、意味不明なツッコミをかます天然ボケ織姫(笑)。
緊張感の欠片もないやり取りに、思わず笑いがこみ上げる。
続・地下救護牢〇七五番にて##H1##3話##H1##
傷ついて囚われた彼らにも、まだ笑い合えるだけの心の余裕があるのだ。
そんな仲間達の強かな一面を感じ取って、一護は内心ホッと胸を撫で下ろした。
「手錠を外すのは後だ。さっさ逃げようぜ!!」
「ム!!」
「オウよ!!」
一人ずつ腕を取り、背を叩き、早く行くぞと促す一護に、力強く頷く茶渡と岩鷲。
しかし、牢の一番奥の寝台にいる雨竜だけは、じっと俯いたまま全く動く気配がなかった。
「石田……?」
皆の気遣わしげな眼差しが雨竜に注がれる。
けれど仲間達の心配気な視線すらも、今の雨竜には届いていないかのように、何の応えも返そうとはしない。
明らかに、彼の様子はどこかおかしかった。
続・地下救護牢〇七五番にて##H1##4話##H1##
けれど彼一人のために、いつまでもグズグズこの場に留まってはいられない。
迷っている時間はないのだ。
「夜一さん」
「なんじゃ」
「悪ィけど、みんな連れて、先、行っててくれねぇか?」
一護の言葉に、夜一の瞳がすっっと眇められる。
「……出来れば、皆で揃って行動するのが得策なのじゃが」
「分かってる……。頼む、夜一さん」
ここでバラバラになってしまっては、いつまた再会できるか分からない。
人数が少なくなれば、それだけ襲い来る敵に対処する手数が減る。
それは敵陣の只中にあって、危険度が増すという事だ。
この場合、従わない者は残していくのが定石だろう。
続・地下救護牢〇七五番にて##H1##5話##H1##
それが厳しい状況に置かれた自分達の立場だと理解してはいても、一護には雨竜を残していく事などできなかった。
「頼む」
引く気のない一護の本気を汲み取って、夜一は渋々ながら頷いた。
「よかろう。…おぬしもあまり遅れるでないぞ。いずれ追手も来るだろうからな」
「ああ、必ず追いつく」
「よし。……ゆくぞ、儂に着いて来い!!」
ヒラリと猫特有の軽い身のこなしで駆け出した夜一に続いて、織姫、茶渡、岩鷲も地上へと続く階段を駆け上がって行った。
再び静寂を取り戻した牢内で、一護は雨竜に歩み寄った。
「石田、どうした?どっか痛くて動けねぇのか?」
「………………」
「おい、石田?」
「………………」
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