思い出は色褪せぬまま
5話
―――――あれから幾年。
約束通り免許を取った一護は、年に一度、ここが一番美しく彩りを変える季節に、この地を訪れる事にしている。
それが、自分と共に闘い………同じ未来を夢見てくれた、雨竜との約束だった。
例え、もう彼が隣にいなくても、二度とその約束が叶えられないのだとしても、決して破られる事のない、それは一護の中の神聖な約束だった。
「石田……」
『…黒崎…』
一瞬の幻聴。
けれど呼ぶ声は、忘れえぬ想いと共に今もこの耳に蘇る。
男にしては僅かに高めの、甘い余韻を持って胸に残るテノールだった。
―――――会いたい。
今すぐ、望んで叶うものならば。
もう一度、彼の事を抱き締めたい。
そしたら今度こそ、絶対に離しはしないのに。
一護の事を向日葵みたいだと雨竜は言ったけれど、だとしたら自分にとっての太陽は彼だったと、今になって思う。
向日葵が太陽に焦がれてその向きを変えるように、自分は今だに、雨竜に焦がれているのだ。
会いたくて会いたくて、こんなにも雨竜の事を求めている。
呼んでいる。
だが、それはもう不可能な事だった。
5/6ページ
[ 前 へ ][ 次 へ ]
[ 目 次 へ ][TOPへ]