思い出は色褪せぬまま
3話
「返事は?」


「……そうだな。君がそれ程言うのなら、僕も一度はその場所を見に行ってもいい」


「行ってもいい、だと!?」


「そう…、君はどうしても僕をその場所に連れて行きたいらしいからね」


失礼な物言いに一護は一瞬ムッとした顔付きになったが、つれない恋人の顔が、決して嫌味で言ったのではないと分かる和んだ表情をしていたので、一護はどこか照れ臭そうな笑みを浮かべた。


「よし、絶対連れてってやる!!約束だぜ」


「…いいよ、約束だ」


「何があっても、約束破るなよ」


絶対に「うん」と言わせてやるから―――と、心底嬉しそうに破顔した一護に、ふと何かに気付いたかのように、雨竜は目の前の顔を真っすぐに見つめた。


「何だよ?石田」


「向日葵みたいだ」


「え…?」


「君の事だよ」


じっと逸らされる事なく見つめてくる瞳に困って首を傾けた一護の髪を、しなやかな細い指先がするりと撫でた。


教室に射し込んだ夕陽がオレンジの髪を照らし、髪は透けて黄金の輝きとなって見えた。


まるで向日葵のように。


「君のイメージだ。向日葵と言う花は、何となく君に似ている気がする」


太陽と競い合うように天を目指して伸びる力強い姿。


それが目の前の男とだぶって見えた。


「俺に?」


「そう」


言って雨竜は綺麗に微笑した。


素直に感情を表さない彼にしては、不思議なくらいストレートに。


偽りのない感情を向けてくる。


それは見慣れているはずの一護でさえ、赤面して口ごもる程に、透き通るように綺麗で優しい笑みだった。


それこそ、永遠に忘れられない程に―――――。

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