風丸一郎太の場合
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放課後。
直ぐに帰ろうと学校から出ると、土砂降りの雨が降っていた。
「うわっ、最悪〜…」
朝は天気予報が晴れの予報だったので、傘を持って来ていなかった。
濡れて帰るのも嫌だし、止むまで待ってると言っても学校でどう時間を潰そうか…。
むんむんと一人で葛藤していた。
そして…
「…よしっ、帰ろう!」
濡れるの覚悟で、走る事にした。
しっかし制服走りにくい!
スカートが気になって、結局直ぐにずぶ濡れになってしまった。
「…もう良いや、歩いて帰ろう」
仕方が無いので、ずぶ濡れのまま歩き始めた。
頭から足まで濡れていたので、制服がやけに重く感じた。
その時、ふっと私の周りだけ雨が止んだ。
いや、後ろにいる誰かが傘をさしたんだ。
振り向くと、同じクラスの風丸一郎太くん。
「傘、無いのか?」
「うん、今日持って来てなくて…」
「…入れよ」
「あっ、ありがとう」
風丸くんの傘に入れてもらい、二人で並んで歩いた。
何だか少し、恥ずかしかったのは私だけなんだろうな…。
「しっかしそんなに濡れてたら、傘の意味あんま無いかもな!」
「天気予報が外れたんだよ〜!」
クスクスと風丸くんが隣で笑うもんだから、ムキになって直ぐに言い返した。
そんな感じで話しながら歩いていると、あっという間に家に着いた。
「あっ家ここなんだ〜送ってくれてありがとう!」
「そっか、じゃあまた明日な!」
「うん、また明日!」
風丸くんと別れ、家に入った。
ずぶ濡れになってしまった髪の毛をタオルで拭いていたら、お母さんが来た。
「今日傘持って行かなかったの〜?」
「うん。でも、楽しかった」
「何〜?好きな人でも出来たとか?」
「ふふっ、内緒〜」
内緒。
この気持ちは、まだ自分でも良く分からないから…。
自分の気持ちに気付くまで、後少し…。
〜風丸side〜
俺は前からアイツの事が好きだった。
今日、傘も持たずにずぶ濡れだったのを見て、思わず自分の傘に入れた。
沢山話せて、楽しかった。
「雨、また降らないかな…」
ぽつりと呟く自分に、俺は思わず、笑ってしまった。
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