D i a r y
Twitterやってます。





口づけの意味



「よ」
「ん」
 一音だけで互いに挨拶を済ませると、携帯をいじっていた勾陣は自分の左隣に置いていた荷物を右側に移した。そこに流れるように紅蓮が座る。彼もまた自分の左側に荷物を置けば、いつも通りの配置になった。
 キャンパス2号館4階9番教室。右列後ろから3番目。そこが彼らの定位置だ。さほど狭くもない室内にはそこそこの人で満たされているが、それは講義のためではない。毎週決まった日程で開催される部会に出席するためだ。
 紅蓮と勾陣は、大学で同じサークルに所属している。色々な意味で緩いことに定評のあるサークルではあるが、きちんと緩急は付けられこの部会に出席することだけは部員の義務になっている。ことこれに関してのみ休む時は委任状まで書かなくてはならない程の徹底ぶりだ。だが基本はのんびり出来るサークルだからか人気は高い。勾陣らの学年だけでも20人程度はいただろうか。まだクーラーが許されないのに気温が高い今日のような日には正直人口密度的な意味で辛いが。
 開始時刻まで15分。20分前に終わった講義上がりの部員もそろそろ来る頃合いだろう。図書館で借りた本でも読むか、と荷物を漁ろうとして、ふ、と気づいた。
 彼女が珍しく携帯を熱心にいじっていることに。
 大抵は自分と同じように本を読んでいる彼女が、今のように携帯に集中している姿はあまり見ない。思わず声をかけた。
「勾、なにやってるんだ?」
「ん? あぁ、Twitterとやらをな」
「Twitter? お前そんなんやってたか?」
「天后に奨められて最近やり始めた。見てるとなかなかに面白いな」
 あとでお前のアカウントも教えろよ、と口元に孤を描いた彼女の目は新しいおもちゃを見つけた子供のように輝いていた。様々な年齢層の呟きやら雑学やらが流れているのを見るのは確かに面白い。彼女の性格を鑑みれば特に。これはハマるだろうな、と苦笑しながら諾と返して紅蓮は手元に視線を落とした。取り出した本のしおりの挟まっているページを開く。
 10分くらいが経ったあたりだろうか。隣の勾陣が不意に「……ほう」と感心したように呟いた。視線だけそちらに向けると、何やら真剣にディスプレイを見つめている。なにか興味を引く呟きを見つけたのだろう。あと少し、とまた文章を追いかけ始めると、思いがけず名前を呼ばれた。
「紅蓮」
「んぁ?」
「ちょっと腕貸せ」
「……は?」
 わけもわからず無抵抗にぐい、と右腕が引かれれば。

 押し当てられる柔らかい感触。

 固まった思考が捉えた微かなリップ音。

 ――――至近距離にある、彼女のしたり顔。

「今日はキスの日なんだそうだ」
 だったらするに越したことはないだろう?
 囁かれた声は何処か婀娜めいていて。完全に硬直した身体はその黒曜に捕われた。
 口を動かそうとして、動かない。その黒になにもかも持って行かれて真っ白になった思考回路はどんな意味も形成しない。
 とにかくこの雰囲気をどうにかしたくて、こう、と必死に名前を呼ぼうと喉に力を込めると、

「はーいじゃあ部会始めます! みんな静かにーっ!」

 それが音になる前に黒の束縛と雰囲気は部長の一声によって吹き飛ばされた。
 特に残念そうにするでもなく、寧ろ何事もなかったかのように携帯を閉じて前を向く彼女は先程とは別人のようだ。普段通りに動くようになった身体を、まだ心持ちぎくしゃくとさせながら動かして前を見る。頬杖をついた右腕には未だ感触が残っていて、今更ながら顔に血が昇ってくるのを感じた。
 深呼吸をひとつ。ざっとと周りを見渡せば、まだ始まったばかりの今は流石に全員部長に注目している。部長も部長で連絡事項を書いたメモを見ているからこちらのことは見ていない。ちら、と確認すれば後列にも人はいなかった。
「…………勾」
「なんだ?」
 返って来たのは楽しそうな返事。
 先程してやられたようにぐい、と引き寄せる。
 
 それは一瞬のこと。
 目を見張る彼女の黒髪を、一房掬って口づけた。

「キスの日なんだろ」
 掴んだ腕はすぐに解放してぶっきらぼうに言い放つ。また呑まれるのではと彼女の目も見れないが、それが照れ隠し故の行動なのはお見通しのはずだ。
 刹那驚いたような視線を感じていたが、間もなく彼女は肩を震わせ始めた。……笑っている。
「……おい」
「……お前は……本当に……っ!」
 一応部会中だという意識あるのか必死に噛み殺そうとしているようだがあまり効果がない。笑う場面か、ここ? と半眼になる紅蓮に勾陣は悪い、と言わんばかりに軽く手を挙げる。
「合格だよ、紅蓮」
「は?」
「お前は本当に面白い」
「……なんだかあまり嬉しくないんだが」
「気のせいだろう?」
 ほら部会に集中しろ、と言ってやれば、渋々意識をそちらに向けたようだ。直前の視線が集中出来なくさせたのはどっちだ、と語っていたが黙殺する。
 さら、と左手で口づけされた髪を梳く。その意味を彼は知らないだろう。何せ自分すら詳しくはさっき知ったばかりだ。
 髪への口づけ。その意味は、思慕。

 そして、腕へのそれは――――。


 唇の代わりに想いを告げる


 全ての意味を知る勾陣から、しばらく込み上げる笑みが絶えることはなかった。



=========================

「なぁ勾、そういえば何でお前は腕にしたんだ?」
「……さぁな。Twitterで調べろ」
「は!?」

 腕へのキス……恋情





◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
キスの日、ということで(笑)
やっつけ感満載の一日クオリティ。なんか紅蓮がへたれじゃないぞ……本文が黒いのは最後の会話を灰色にしたかったからであってあんまり意味はありません←
キスの日ってことを私もTwitterで知ったので姐さんにもそうして貰いましたwあ、あと紅蓮は腕まくりしてますよ。
ちなみに部会のくだりあたりはけっこうリアルに近かったりする。





05.23.(23:17)



Ibってホラゲに

ドはまりしました←
いや正確にはギャリイヴですけどね。ギャリーさんマジ世界一のイケメンオネェ。
きっかけは友達のニコ生の実況プレイ鑑賞なんですけど。ちょっと今リアルでホラーフリーゲーム作ろって話になってて友達のひとりがホラゲ実況しまくってるのです。だから私は実際プレイはしてないんですけどね。だって私ホラー大の苦手。
実況見てる時はそんなんでもなかったのに、ツイッターでギャリイヴを知って支部で検索かけてみたのが全ての始まりだよ!!!
なにあの可愛い人たち。なにあのかっこいい男口調ギャリーさん。なにあのイケメン女の子。
そしてなにあの超悲しいEDの数々。真ED以外全部切ねぇ……
Ibのお陰でマカロン嫌いが払拭出来そうな勢いです(キリッ

とりあえずギャリイヴは10年経ったらとっとと結婚しようか^^^

05.18.(19:58)



それはきっと陰ることなく


 久々に登った屋根には先客がいた。
「……考えてることは同じか」
「どうやらそのようだな」
 片膝を立てて座っていた勾陣は涼やかに笑った。



 心地の好い沈黙が降りる。見上げた先の、月明かりに照らされた雲の流れる様がなんとも言えない美しさを醸し出している。静かな空間の中でその雲だけが時の流れを感じさせていた。
 今宵の月はスーパームーンと言うらしい。いつもより月がより大きく、より輝いて見える。欠けがない分その存在感は大きくて、少し雲に隠された程度ではその光を見失わないくらいに煌々と照っている。
「久しぶり、だな。お前と屋根で過ごすのは」
「あぁ。昔はよくこうしていたがな」
 空を見上げたまま、懐かしむように目を細める。千年前、まだあの主と孫が在った頃は、毎晩のように屋根に登っては隣に座る彼女と過ごした。現在ではなかなか屋根に登ることはなくなったが、月を見るなら屋根上だ、という無意識の観念は彼女も同じだったらしい。過ごし方は今も昔も変わらない。ただ静かに隣に座って、たまに他愛のない会話を、たまに酒を傾ける。それだけ。
 ――そして彼女は、いつも通り突拍子もないことを言う。
「騰蛇」
「ん?」


「『月が綺麗ですね』」


「……っ!?」
 言葉に詰まったのは、幸か不幸かその意味を知っているから。
「な……おま、」
「なんだ? まさか意味を知らないなんてことはあるまい?」
「……知ってる、が」
 心臓が早鐘を打つのを止めてくれない。いきなり何を言い出すんだ、と言うのは最早無駄な抵抗に過ぎないことをもう何年も前に悟っている。だが、いくらなんでも言わずに居られない時だってある。

 ――知っているも何も。

 彼女とその話題を口にしたのはほんの数時間前のことだ。



『ほう、スーパームーンか。月がいつもより綺麗に見える、ね。今時あの言葉は流行っているのかな』
『あの言葉?』
『“月が綺麗ですね”』
 あの時も心臓が跳ねた。咳ばらいをひとつ。
『……夏目漱石か?』
『なんだ、知っていたのか』
『それくらいはな』
『じゃあ、その返し方も知っているな?』
『まぁ、一応』
 その答えに、勾陣は腕を組みながら満足げに笑った――。



 彼女の浮かべた笑みに例の如く嫌な予感を覚えていたことを、また例の如く今にすればもっと気に留めていればよかった。そうすればこんなに動揺しなくて済んだはずだ。恐らく。……毎度思うが。
 多分、あの時はたまたまニュースか何かで見たんだと思う。洗濯物を畳んでいて、今夜は月が綺麗らしいぞとこれもたまたまリビングに居た勾陣に言った。本から顔をあげ、関心を示した彼女とした会話が先のそれだ。

 そして現状である。

 絶対にわざとだ。通じるということを理解した上のからかいだ。断言出来る。例の如くこいつはこういう言葉をさらっと言うから質が悪い。こっちは確実に振り回されている。ならこちらも奇襲戦法をとればいい、という話になるが、それが出来れば苦労しない。成功すれば確かに効果てきめんなのだが、まずその後にくる三倍返しの報復を覚悟しなければならない。これが何が来るかわかったもんじゃない。それにそもそも彼女には奇襲をかける前に何故か大抵気付かれる。慣れないことはするなと言外に告げられているようだ。
 すぅ、とひとつ深呼吸。こんなことを考えているより、聞きたいことがある。すっと表情を引き締めて身体ごと彼女に向き合う。月は未だ、なんの障害もなく煌々と照っていた。
「勾、ひとついいか」
「なんだ」
「月はいつも綺麗な面だけ地球に見せているが、裏側にはもっとたくさんクレーターがある。それでもお前は綺麗だと言うか」
 真剣な瞳で問い掛けられた彼女は、口許に優しげな孤を描いた。
「私を誰だと思っているんだ?」
 ――愚問、だったか、とは高揚する心の中に仕舞って。
 そっと顔を近づけた。
「わかった。ありがとな。……俺、」


 死んでもいいぞ。


 耳元で囁いて、肩を震わせた彼女にそっと口づけた。



――――――――――――
月夜の下で「愛してる」
別の言葉に置き換えた





◇◇◇◇◇◇◇◇
タイトルが決まらなくて完成してから3日程放置されてました←
結果こんなタイトルです。誰か私にネーミングセンスをください……

というわけでスーパームーンネタです。ちょっとリア事情があってとにかく幸せにさせたかった。最後の方のクレーターの例えとか書きたかったんで満足です^^*
それにしても「I love you」を「月が綺麗ですね」「死んでもいいわ」と訳した文豪の方々のセンスは本当に凄いと思う。


05.12.(21:28)





お題小説やってみたいんだよなぁ。たまに見かける拍手での百題。いろんなCP書いてみたいけどメインにするほど書ける気もしないという←
拍手百題くらいならどうにかなるかなー、とか思ってるけど甘いだろうか。でもなかなか好みの百題にまだ巡り会えないんだよなぁ……ちょっと少なめにしてみようかな。五十題とかは質問お題以外にあるのかな?

いやその前にスーパームーンネタと平安ネタ書き上げろって話ですが^p^;


05.07.(18:37)



月が綺麗ですね

ネタ書きてえええぇぇぇっ!!!←
今日明日スーパームーンじゃないですか。お膳立てされてるじゃないですか。
紅 勾 美 味 く ね ?
いやだが超短編にしかならないな。日記か? まぁいいや書いてみるかなパソコンー!!

05.05.(21:27)




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