超ハイスペックな人にプロポーズされた!



『うちの帝王を騙してみぃひんか?』


 そんな事を聞いて来よったんは、謙也の従兄弟で何気に仲ええ友達(この場合はメル友て言うんやろか。)の侑士やった。
 いきなり電話かかって来て、ちょっと世間話した後に切り出されたんがこの話。

 詳細を尋ねてみた所、うちの帝王っちゅーんは言わずもがな氷帝の部長の跡部ん事やった。(実物は見た事あらへんけど、侑士との会話で何遍か出て来たから知っとりはすんねん。)
 ハロウィンの夜に氷帝で催されるハロウィンパーティーに女装して来て、跡部を騙せるか試してみよーやっちゅー提案らしい。

 おもろそぉやとは思たけどハロウィンは小春とイチャイチャしたかったし、最初はその提案に乗る気はあらへんかった。
 せやけど…

『ユウジの物真似か跡部の眼力(インサイト)、どっちが勝つんか気にならへん?』


 そんな風に焚き付けられたら、乗らん訳にはいかんやろ?




 ダンスパーティーっちゅー事で、ドレスはおとんの伝手で黒色に金色が散りばめられとるやつを借りた。(成金っぽくてちょい厳つく見えんねんけど、高そぉなドレスや。)
 それを着て化粧とか髪の毛は侑士の姉ちゃんにセットして貰て、出来上がった“ユウちゃん”は自分で言うんもなんやけどえらい別嬪に仕上がっとる。

 きつい印象に見られる吊り目は目の周りに施されとるアイシャドーとか…まぁあんまメイクとかよぉ分からんけど、化粧のお陰で強気っぽい猫目に見えるし、いつもは外跳ねしとる髪の毛もヘアアイロンとウィッグのお陰で肩までの緩く巻かれたロングヘアーやから、ホンマにこの姿は強気なお嬢様って感じや。


「ぁ、あーー…、ワレワレは宇宙人ダー。」

「はは、ホンマに女の子なってしもたな。」

 侑士の姉ちゃんが今から仕事で出掛けるとかで部屋出てって、女子の高さの声出す練習しとったら入って来よった侑士はそう言うて笑っとる。
 そんな侑士に近付いて、俺は侑士に挑戦的に笑いかける。

「“ど?惚れちゃった?”」

「…洒落ならん位魅力的やわ。」

 ホンマに惚れてまいそう、っちゅーて蠱惑的に笑い返して来よったその姿に、何でコイツと同じ血ぃ流れとんのに謙也はあないヘタレなんやろなぁてボンヤリ思った。




 このパーティは招待さえされたら氷帝生以外も参加出来るらしゅうて、勿論の事やけど俺…いや“あたし”は侑士の招待で参加するんや。

 ユウちゃんは侑士の小学生時代の友達で、東京まで遊びに来たついでに侑士にパーティ誘われたっちゅー設定。
 どぉせやったら跡部の好みに合わせたろって事で、性格は勝ち気な“ユウちゃん”を演じるんや。

 そんでハロウィンパーティー終了までに跡部が俺の性別に気付いたら、跡部の勝ち。気付かんかったら俺の勝ち。



……そんだけの筈やってんけど、只今何やおかしな事態に陥っとる。




「……は?」

 い、今この目の前のイケメンは何てほざきよった…?


……ってアカンアカン、素が出てしもた!

 俺は慌てて“ユウちゃん”になって、ひきつりそぉな頬を堪えて笑顔で跡部に問い掛ける。


「あ、跡部さん?いきなり何言うてはんの?」

「聞こえなかったのか。
 お前を俺の物にしてやるっつってんだよ。アーン?」

 いやいやいや、アーンて自分、そんな台詞公衆の面前でー…ってちゃう!突っ込むとこそこちゃう!(意味分からん状況過ぎて、混乱して来たんやけど!)

 目の前のイケメンこと跡部と俺は初対面や。それは“ユウちゃん”も言わずもがなで。


 会って1分も経たんと告白て、どないやねん!



「え、えーっと…あたし、跡部さんと初めて会うたと思うねんけど。」

「そんなもの関係ねぇだろ。」

「てゆーかあたし、跡部さんの事全然知らへんし…。」

「これから知っていけば良い。」

 そう言うて跡部が呆然としとった俺の手首を引っ張りよったから、その力に逆らえんと俺は跡部の方に倒れて抱き止められた。


 え、ちょ、ホンマにこの状況どないしたらええんや!?


 傍で呆気にとられとった侑士に、視線で助けを求めてみる。
 せやけど俺の目配せで我に返った侑士は、ただ苦笑をするだけで傍観する気満々や。(この裏切りモンめ!)


 取り敢えず目の前の俺に告白して来た阿呆から逃れる為に、脳味噌フル回転で言葉を探す。


「あー…あたし好きな人が居るから――ンッ」


「拒否権は端っからねぇ。」

 唇がくっ付いた位近付いとった跡部のおキレイな顔が離れると共に、言われた横暴な台詞。
 それに腹立てる事も出来ん位、俺の頭ん中は真っ白やった。

 い、いぃぃ今こいつ、俺にキスしよった!
 有り得へん…っ!


 周囲からは女子共の悲鳴が響き渡っとって、目の前の跡部は俺を抱き締めたまま離さんくって。

 そんな状況に耐えられんくて、俺は叫んだんやった。


「っお、俺は男じゃボケーッ!!」




超ハイスペックな人にプロポーズされた!
「なっ、男なのか!? ならしょーがねぇ…。」「せやせや、潔ぉ諦めろ」「結婚式は海外でだな。」「何でそぉなんねんっ!」

(11/16)●突然のできごと20題





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