理不尽



 

 ユウジ先輩は理不尽や。

 俺がちょっとでも誰かユウジ先輩以外と絡めば直ぐに浮気すんなて言う癖に、自分が小春先輩に好き好き言うんはええて言う。
 ユウジ先輩の恋人は俺やのに、ほんまうざいっすわ。


「何や、またユウジら見とんのか。」

 休憩時間もイチャこいとる阿呆2人、っちゅーかユウジ先輩を見とったら、謙也さんに声掛けられた。

「やってウザいやないですか。」

「まぁまぁ、あいつらがイチャついとんのなんて元からやろ。
 しゃーないっちゅー話や!」

 元からやからって、しゃーなくは無いやろ。
 ユウジ先輩は俺の恋人であって、小春先輩とはただの相方なんやから。イチャつく理由が分からん。

 そう思たけど口には出さんとムッスリしとったら、謙也さんの阿呆に折角ワックスでセットしとった俺の髪の毛をぐしゃぐしゃとかき混ぜられた。


「大丈夫やって、ユウジ何やかんやゆうて自分の事好きやさかい。」

「そんなん何で分かるんす」

「ゴラーッ!浮気か、死なすど阿呆!」

 か、て続けた言葉はユウジ先輩の怒声に掻き消されて、其方を見やればラケットを振り回しながらギャーギャー喚いてこっち来るユウジ先輩が居た。

「な?」

「いや、な?の意味が分かりませんわ。
 ただ理不尽な事喚いてはるだけやん。」

「いやいや、せやから、」

 ユウジむっちゃ反応早かったやろ?
 あいつ何やかんや言うて、ずっと光の事意識しとんねんで。
 っちゅーか、光の傍は恥ずかしゅうて居れんらしい。

 続けられた言葉に目ぇ見開いたら「お幸せに。」なんて言うて謙也さんは白石部長んとこ行きはって、入れ違いで俺の前に来たユウジ先輩はまたもや理不尽な事で怒る。

「浮気すんなて言うたやないか!」

「あれで浮気とか言われた俺誰とも話せませんやん。」

「うっ、せやけど…!」

「そないに嫌やねんやったら、俺の横で浮気せん様に見とけばええでしょ。」

「え、」

 俺の言葉にキョトンとしたユウジ先輩に、ほら。て言うて手ぇ差し出したら、ユウジ先輩はアホか!て言うて俺の手を叩き落とした。

「手ぇなんか繋ぐか!」

 そう言いつつホンマに俺の横におずおずと来はるから、俺は「しゃーないっすわ。」て呟いて小さく笑った。



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